山中湖湖底堆積物に記録された過去2500年間の環境変遷史 : 花粉の運搬・堆積過程の基礎的研究とその応用

概要

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花粉化石群集の古生態解析の精度を上げるために, 山中湖とその周辺環境における表層花粉の分析と, 山中湖湖底ボーリングコアの花粉および珪藻化石の分析を行った。表層花粉の分析の結果, 湖深・湖岸型(Fagus, Quercus), 湖岸型(Picea), 湖岸・山麓型(Gramineae, Cyperaceae, Artemisia), 広域型(Pinus, Cryptomeria, Abies, Ulmus-Zelkova, Tsuga, Betura, Larix)などの花粉の堆積の類型が区分された。また, 母植物の被度に対して過大評価(Pinus, Cryptomeria), および過小評価(Fagus, Quercus, Larix)されるものが識別された。ボーリングコアの珪藻分析の結果, 2500〜1850年前には湿原が, 1850年前の湖の成立から300年前まではやや低水位の湖が存在し, それ以降に水温の低下と水深の増加があり現在に至ったと推定された。ボーリングコアの花粉分析の結果, 2500〜1000年前は花粉の出現率が過大評価されるスギの優占ではなくカラマツやコナラ亜属優占の森林が, 1000〜300年前は温帯落葉広葉樹優占の森林(気候の温暖・乾燥化, 湖水位低下:「中世の温暖期」)が, 300年前以降はスギ林の拡大(気候の冷涼・湿潤化, 湖水位上昇:「小氷期」)が, それぞれ推定された。
日本地質学会の論文
1993-03-29