日本におけるスカルン帯からのフェロヘスティングスセン石
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概要
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スカルン帯に産するフェロヘスティングスセン石の産出例は比較的少ないが,今後この鉱物が,スカルン帯から発見される可能性が大きいと思われる。そこで,今までに判明した例について報告する。スカルン帯または火成岩の接触帯に産するフェロヘスティングスセン石は,世界でも僅かの例しか記載されていない。本邦においては須藤(1939)によって,富山県立山一ノ越付近の角閃石閃緑岩中のザクロ石・リョクレン石・ヘスティングサイト質カクセン石脈の記載がなされ,WATANABE and YAGI (1953)によって岩手県観音山の花崗閃緑岩の接触帯におけるオノ石・ヘスティングサイト質カクセン石岩の記載がなされた。筆者は大分県尾平鉱山,長野県金峯鉱山,福岡県門司鉱山のスカルン帯からそれぞれフェロヘスティングスセン石を見出した。これらの例は鉱物共生およびスカルン帯としての産状など共通している。そのほか,岡山県本山鉱山,三宝鉱山,三原鉱山,吉岡鉱山などにおいてもフェロヘスティングスセン石が,加藤,益富,桜井によってX線と光学的性質から同定されている。尾平鉱山大蔵坑においては,古生層石灰岩を交代したスカルン帯に産し,カイテッキ石,ベスブ石,カイテツザクロ石などを交代または包有して,フェロヘスティングスセン石を産する。金峯鉱山のフェロヘスティングスセン石は,上部ジュラ紀と考えられている,川上層群の砂岩,頁岩,粘板岩に貫入した花崗岩の接触交代鉱床の,ザクロ石-カイテツキ石スカルン帯において,これらを交代または包有して産する。門司鉱山においては,秩父古生層の粘板岩と石灰岩との接触面に胚胎した接触交代鉱床の,ザクロ石,カイテツキ石,ケイカイテツ鉱,リョクレン石などからなるスカルン帯に産し,フェロヘステインダス閃石は,ザクロ石,カイテツキ石を交代または包有して産する。これらのフェロヘスティングスセン石は,繊維状〜放射状結晶集合体として産し,色は暗緑黒〜濃緑色で,硬度5.5〜6度を示し,比重は3.32〜3.40である。これらの光学的性質は第2表に示したようにお互によく類似している。さらにその他の地域におけるスカルン帯のフェロヘスティングスセン閃石の光学性と比較してもよく類似している。上記日本の三鉱山産のそれを含めて,スカルン帯からのフェロヘスティングスセン石の7例について,その化学成分を第3表に,またこの化学成分から,(O,OH,F,Cl)-24.00で計算した原子比を第4表に示した。これらは,ヘスティングスセン石に属するカクセン石類を3分したBILLINGS (1928)およびBORLEY and FROST (1963)のフェロヘスティングスセン石である。さらに,フェロヘスティングス石の一般式W_3X_4YZ_8O_<22>(OH)_2,および(Na,K)Ca_2Fe_^<2+>Fe^<3+>Al_2^<iv>Si_6O_<22>(OH)_2にあてはまる。しかしこのFe^<2+>の一部はMgによって置換され,Fe^<3+>の一部はAl^<3+>によって置換されている。上記三鉱山のフェロヘスティングスセン石を,ノレルコX線回折計数装置によって,同条件で測定した結果を第5表に示している。これらは,またお互に非常によく類似している。
- 日本地質学会の論文
- 1974-09-30
著者
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