人歯エナメル質の破壊靱性について

概要

論文の詳細を見る
マイクロビッカース硬さ試験機を用いた微小圧子圧入破壊法によって, 人エナメル質の破壊靱性を計測した.微小圧子圧入破壊法は人エナメル質の破壊靱性(K_<IC>)を求めるのに十分有効であり, さらに簡単で能率的, 経済的といった特徴が認められた.測定荷重が2.45〜5.88Nの範囲内では人エナメル質に生じる亀裂はmedian crackと推定できた.さらに, エナメル質表面の仕上げ研磨砥粒をある程度変えても破壊靱性には影響はなかった.エナメル質の破壊靱性は歯種間で差があり, 高齢者の上顎中切歯で0.61MPam^<1/2>, 下顎第二大臼歯で0.77MPam^<1/2>と, 大臼歯の方が大きかった.エナメル質の破壊靱性にはエナメル質の異方性の影響が強く現れ, エナメル小柱に対する圧子圧入方向の違いの差が大きく, 高齢者のI方向が顕著に高く0.84MPam^<1/2>, H方向0.66MPam^<1/2>さらにV方向0.61MPam^<1/2>であった.エナメル質の破壊靱性値は10歳が58歳より全般的に少し高かったが, ほぼ同様な傾向を示していた.
日本歯科理工学会の論文
1989-05-25