長期水中浸漬が臼歯修復用コンポジットレジンの崩壊に及ぼす原因に関する研究
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概要
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本研究は, 長期間の蒸留水中浸漬が臼歯修復用コンポジットレジンの崩壊に及ぼす原因を究明するために, 3年間, 37±1℃の恒温蒸留水中に浸漬した3種の臼歯修復用コンポジットレジン〔Bellfirm P(BP), Clearfil Posterior(CP), Micro Jar(MJ)〕と1種の前歯修復用コンポジットレジン〔Clearfil F II(F II)〕の溶出量試験後の試験体および試験体を浸漬していた蒸留水中の残渣物について走査型電子顕微鏡(SEM)観察およびX線回折分析, 赤外線分光(IR)光度計と核磁気共鳴(NMR)装置による分析を行い, 検討した結果, 次のような結論を得た.溶出量試験3年後の試験体内部のSEM観察では, 4種のコンポジットレジンは練和により発生した気泡が多く観察され, しかも試験体表層付近ではすべてひどく崩壊されていたが, 試験体内部中央付近まで崩壊が達していなかった.一方, X線回折分析では, 浸漬前の臼歯および前歯修復用コンポジットレジンのBPとCPおよびF IIの回折パターンはそれぞれのフィラーに由来する結晶性を示したが, 臼歯修復用コンポジットレジンのMJは非結晶性であった.また, 3年後の蒸留水中の残渣物では, 臼歯修復用コンポジットレジンのBPを除く3種のコンポジットレジンの回折パターンは結晶性を示し, 臼歯修復用コンポジットレジンのCPを除く臼歯および前歯修復用コンポジットレジンのMJおよびF IIの場合, それぞれのフィラーのピークと異なる結晶であった.蒸留水中の残渣物のIRおよび^1H-NMRスペクトルでは, 臼歯修復用コンポジットレジンのBPの場合, このベースレジンの未反応モノマーが検出されたが, 臼歯および前歯修復用コンポジットレジンのCPとMJおよびF IIでは未反応モノマーがほとんど確認されなかった.また, ^1H-NMRスペクトルでは, 4種のコンポジットレジンはすべてそれぞれのモノマー成分以外の新たなシグナルが検出されたことにより, いずれも崩壊が進行していることが判明した.従って, これらの蒸留水中の残渣物は無機フィラーの表面処理剤として用いられているシランカップリング剤とレジンマトリックス間で崩壊した物質であるものと推察でき, 長期間の水中浸漬による臼歯修復用コンポジットレジンの崩壊は, 加水分解に起因するものと考えられる.
- 1990-07-25
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