タンニン・フッ化物合剤(HY剤)を配合したグラスアイオノマーセメントの合成ハイドロキシアパタイトペレットに及ぼす影響

概要

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タンニン・フッ化物合剤(HY剤)を粉末に10%配合したグラスアイオノマーセメント(以下HY10と略す)の歯質の無機成分に対する作用を調べるために, 合成ハイドロキシアパタイト(以下HApと略す)のペレットに90日間作用させ, 生成物をX線回折法により確認し, 取り込まれたF量, Zn量, Sr量を測定するとともに同ペレットの耐酸性について検討した.なお, HY剤を配合していないグラスアイオノマーセメント(以下HY0と略す)を比較対照とした.その結果, HY0を作用させたHApではフッ化カルシウムが形成され, HY10を作用させたHApではフッ化カルシウムの他にリン酸亜鉛の形成を確認した.HY10からの取り込みF量は, HY0に比較して有意に多く, 経時的に増加した.HY10からの取り込みZn量は作用10日で最高値を示していたが, 以後経時的に減少し, リン酸亜鉛の消長と一致した.取り込みSr量は経時的にわずかに増加した.耐酸性試験においては, HY10を作用させたHApの溶出Ca量はHY0に比較して有意に少なかった.したがって, 合成ハイドロキシアパタイトにHY10を作用させると, リン酸亜鉛およびフッ化カルシウムが形成されて, HY0よりもすぐれた耐酸性を付与することが示唆された.
日本歯科理工学会の論文
1993-11-25