アンデスの火山活動からみたペルー南部における地殻・マントルの温度構造
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概要
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ペルー・チリ海溝に沿ってのプレートの沈み込む角度は, 約30度であるが, その上面が深さ100kmのところで水平になっている部分がある.現在の活火山のギャップは, まさに水平なスラブがあるところと一致している.そして, これら両者は2∿3百万年前から出現したと考えられる.沈み込んだスラブが, 30度の傾きをもったまま, さらに深部まで続く領域と水平になっている領域との違いは, その上部のマントル・ウェッジ部の構造-特に温度構造-を決定的に違わせている.一般に島弧の火山活動は, (1)沈み込むスラブがもたらす含水鉱物からの脱水反応によるH_2Oの供給と, (2) H_2Oが供給されれば溶融相が形成される状態(Potential melting状態)が必要条件と考えられる.したがって, 深さ100kmで水平に"沈み込む"スラブは, (2)の条件を満たさない温度構造を形成していると考えられる.ナスカ海嶺とペルー・チリ海溝との会合点以北に分布する活火山のギャップの領域では, 下部地殻も上部マントルも部分溶融の状態にないらしい.地殻熱流量のデータは不十分ではあるが, これと矛盾していない.一方, 南部ペルー(及び北部チリ)においては, 重力異常などから推定される地殻の厚さが60km以上の部分(アルティプラーノ)に活火山が存在する.そこでは30度の角度で沈み込むスラブ, 厚い地殻, 地殻熱流量が90mW/m^2以上であることなどから, 深さ50km以深のガブロ質の組成をもった地殻は, 少くとも部分溶融の状態にあると結論できる.このようにして推定された温度構造から考えると, 中部アンデスにおける現在の火山活動は, 下部地殻の部分溶融状態と密接な関係にあるといえよう.
- 特定非営利活動法人日本火山学会の論文
- 1984-07-01
著者
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