衣服の模様から見た「岩窟の聖母」の制作年代
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概要
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はじめに レオナルドの絵画作品について、そこに描かれた衣服の模様に注目して分析する試みは、これまでほとんどなされて来なかった。この問題に関して現在われわれが参照できるごくわずかな研究論文でも、「モナリザ」や「白貂を抱く婦人」等を対象にしたものだけで、「岩窟の聖母」に関しては全く見出すことができない。しかし、ルーヴル美術館とロンドン・ナショナル・ギャラリーにある2点の「岩窟の聖母」をこのような観点から詳細に検討してみると、そこには実に数多くの興味深い問題が横たわっていることが明らかになる。そこに描かれた人物の衣装には、実に多種多様な模様が見出されるのである。一方、レオナルドがさまざまな時期に書き残した手稿にも、実に数多くの模様の習作があるし、レオナルドの他の絵画作品や彼の弟子たちの作品中にもかなりの数の模様が見出される。それゆえ、これらの模様同士を比較検討してみることによって、ルーヴル版とロンドン版がいつ頃制作されたかを推測するための手懸りを得ることはできるはずであるし、このような試みは-たとえ大きな成果が得られないかも知れないとしても-やってみる価値は大いにあるように思われるのである。
- 1997-10-20
著者
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