不育症カップルへの対応 : 安心して出産できる医療と社会環境の整備をいかにすすめるか(<第45回日本母性衛生学会学術集会シンポジウム[II]>少子化に対する取り組み)

概要

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平成16年6月10日に厚生労働省から公表されたわが国の平成15(2003)年の出生総数は112.4万人, 合計特殊出生率は1.29を記録し, 1899年にこの種の統計を取り始めて以来, いずれも最低の記録をさらに更新した。少産少子の社会は, 多くの社会の仕組みのダウンサイジングを求め, 年金などへの影響を懸念されるが, 生殖医療においては日々の臨床に携わる産婦人科医にも, 看護師にも新たな医療の取り組みが必要になってきた。112万件の出生数に対して約30万件の推定自然流産件数に注目が集まるのも, その好例である。反復するヒトの自然流産あるいは子宮内胎児死亡例に対して, 内外の生殖医療はようやく総合的な原因検索や合目的な治療の選択をもって不育症夫婦に対応するようになってきた。ヒトの生殖のロスは, 従来から指摘されてきた胚の染色体異常という単一な原因で引き起こされるのではなく, 想像以上に多岐にわたる他の原因でも起こることが判明してきた。夫婦の染色体異常, 母体の自己免疫疾患, 先天性子宮奇形など次々と重要な原因が指摘され, 自然流産が必ずしも自然淘汰と片付けえない症例が多数含まれることが認知された。