法的推論システムHELIC-II(3) : 判例を用いた類似検索と判断生成
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概要
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われわれは,並列法的推論システムHELIC-IIを開発してきた。法律における推論は,条文を形式的に記述して推論を行うだけでは,その中に現れる法的概念の解釈の問題があるので,うまく行かないことが多い。たとえば,刑法210条の内容は,過失により人を死に致したものは過失致死罪により罰せられるであるが,この中の法的概念過失などの定義は条文には存在しない。そこで,判例を用いてこの問題を解くことが自然に考えられる。類似の事件での判例があれば,それを適用することで新しい問題を解決することができる。したがって,この点で,事例ベース推論(Case-Based Reasoning: 以下 CBR)の必要性が認められることになる。HELIC-IIの判例を用いた推論は,CBRの枠組を応用したものである。したがって,事例となる知識を変更することで,汎用の問題解決器になることも期待できる。ここでは,HELIC-IIの類似論理構築部として,事例ルールと呼ばれる事例知識を用いて推論を行う方式を並列推論マシンMulti-PSI/PIM上で実現したので,今回は特にその照合方式について詳しく述べる。一般に事例を用いて推論する場合,推論能力を考えると大量の事例が必要とされる。そこで,高速化が要求されるが,ここでは,事例ルールの左辺部をRete風の照合ネットワークに展開し,並列部分照合を行うことでこの問題を解決する。その際起こる問題点とその解決方法についても報告する。
- 1992-09-28
著者
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