酵素剤による蛋白質の分解 : 醤油の醸造における酵素剤の利用(I)
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概要
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醤油醸造において, 蛋白質をアミノ酸にまで分解するのに最も適した酵素の生産微生物は, 醤油, 味噌, 酒, 味醂等の醸造食品に古くから用いられてきた黄麹菌であった.黄麹菌のペプチダーゼは, 従来, 菌体内酵素と考えられていたが, 本研究により半分以上が菌体外に分泌され, 調製された酵素剤中のペプチダーゼ力価もかなり高いことが明らかになった.なお, 自己消化による排出も否定出来ないが, 培養時間がかなり短くても(24時間位)菌対外にペプチダーゼが認められる点や, 黄麹菌のペプチダーゼの分子量が必ずしも大きくないことから, 細胞膜を通過して菌対外に分泌される可能性もあると考えられる.アミノ酸生成力が高いと言われた放線菌起源の酵素剤は, 本研究においてはほとんどアミノ酸を生成しなかった.これは最適pH, 基質の種類, 基質濃度の違いによるものではなく, 使用した放線菌の酵素剤中のペプチターゼが黄麹菌ペプチダーゼに比較してその種類と量が少ないか, 基質特異性の幅が狭いためと考えられる.また放線菌の蛋白分解酵素の最適pHはアルカリ側にあるが, アルカリ側での蛋白質の酵素分解では香りのよい分解物は得られない.蛋白質の酵素分解をpH無調節で行うと, 多くは微酸性になる.一方, 黄麹菌ペプチターゼの最適pHと安定pH領域は微酸性側にあるので蛋白質の分解に好都合である.さらに, 黄麹菌ペプチダーゼの種類およびそれらの生産量は多く, 基質特異性も広く, その上, 黄麹菌は蛋白分解酵素の他, 種々の多糖類分解酵素を分泌するので, 同微生物より調製した酵素剤は醤油醸造に最適な酵素剤であることがわかった.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1976-12-25
著者
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