溶菌酵素産生細菌株の同定
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概要
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土壌から分離した溶菌酵素産生菌株, EU-819,EU-889,EU-1349,EU-2032の4株について同定した.全供試菌株は, 細胞形態, 培養的, 生理的諸性質に大きな差異が認められず同一菌種に属するものと考えられる.本菌種は, グラム陰性の桿菌で運動性は認められない.肉汁寒天上で24時間培養した細胞の大きさは, 0.4〜0.7μ×1.5〜4.0μの範囲で, まれに5.0〜7.0μの長細胞のものも認められる.肉汁寒天上では, はじめcreamないしcream yellowの色調を示し漸次褐色ないし黒色となる.グルタメート寒天上では, 生育は微弱で無色ないし黄味灰色を示す.ゼラチンを液化, ミルクをペプトン化してアルカリ性となる.生理的諸活性は弱く, 硫化水素をわずかに産生するほかは, 硫酸塩の還元, インドールの産生, V-Pの反応, デンプンの加水分解, アルギニンの分解等いずれも陰性である.糖の分解能は, 好気的にグルコース, フラクトースおよびマルトースからわずかに酸を生ずるほかは, いずれも陰性で, 嫌気的分解はいずれの糖においても認められない.本菌種の特徴として, 肉汁寒天での褐変現象と自己消化性およびゼラチン含有培地での異常細胞形態の形成等を挙げることができる.すなわち本菌を肉汁寒天で培養すると培地は褐変し, 培養5日ないし7日間で溶菌し菌体が消失する.しかし培地にグルコースが含まれていれば, 菌体は短桿状となるが消失することはなく, 褐変現象の発現もにぶくなる.またゼラチン含有培地では特異的な形態変化を示し, 長いヒモ状形態から, 最終的には鎌形の細胞に変化する.牛乳, ゼラチンなどに対する作用は, 強い活性を示すが, 同定上の指標となるその他の生理的諸活性は微弱であり, グラム染色性, 運動性, 糖の分解様式およびアルギニンの加水分解能などの諸点からAchromobacterに属する菌種と考えられるが, Bergy's Manualの第6版および第7版に記載された菌種と比較しても一致したものがない.培地を褐変ないし黒変する細菌として最近Pseudomonas melanogenum. Achromobacter brunificansが報告されているが, 前者は, 極鞭毛を持ち, グルコース, クエン酸を資化せす, また後者とは, 牛乳, ゼラチンに対する作用性, 糖の分解用式, クエン酸の資化性などの点で異なる.以上の結果本菌種を新種と認め, ゼラチン培地上での形態的特徴にもとずき, Achromobacter lunatus Yanai. Ishikawa and Tsumura nov.sp.と命名した.
- 社団法人日本生物工学会の論文
- 1973-04-25
著者
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