Rosellinia herpotrichioides HEPTING et. DAVIDSONのエゾマツ苗 雪腐病病原としての検討(第1報)
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概要
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エゾマツ苗の雪腐病の病原菌はRosellinia herpotrichioides HEPTING et DAVIDSONであるとされてきた。しかし著者らが北海道および東北地方各地のエゾマツ, トドマツそのほか20数種の針葉樹の雪腐罹病苗から病原菌の分離培養を行つたが, Roselliniaは1回も見いだされなかつた。そしてエゾマツとトドマツ苗から例外なく分離されたのは胞子型を全く持たない一種の糸状菌で, Rhizoctonia sp.(暗色雪腐病菌)と同定した。従来報告された雪腐病はこれによつておこると認められる。Rhizoctonia sp.とRosellinia herpotrichioides(夏から秋にかけて認められる)による病微標微のいちじるしいちがいは, Rhizoctoniaによるものの被害部には灰色〜暗緑色〜暗褐色の菌褥が発達し, 子実体が形成しない。ところがRoselliniaでは灰白色〜灰褐色の菌褥が発達, 黒色か(顆)粒状の子のう殻を群生し, またBotrytis型の分生胞子も形成する。また菌糸についてもRoselliniaでは, その途中に洋梨形にふくれた細胞をまじえるがRhizoctoniaにはみとめられない。したがつて病微標微, 菌の形態からみて, 両菌はまつたく別種のものとみとめられる。各種寒天培養基における発育は, Rhizoctoniaはジヤガイモ煎汁寒天や, 齋藤氏醤油寒天, ワツクスマン氏寒天で良好で, Roselliniaではトドマツ葉, クロマツ葉煎汁寒天でよく, ジヤガイモ煎汁寒天と齋藤氏醤油寒天ではあまりよくない。寒天培養基のブドウ糖の含量とRhizoctoniaの菌叢の発育については, Rhizoctoniaはまつたく糖を欠けば菌叢がうすくなるが, ブドウ糖の濃度と菌叢ののびにはいちじるしい差がみとめられない。ところがRoselliniaでは糖を欠くと発育がごく不良である。Roselliniaの子のう胞子は20%蔗糖液, 蒸留水, 2%ブドウ糖液ではかなりよく発芽するが, 水道水ではかなりおとる。
- 日本森林学会の論文
- 1959-02-25
著者
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