花粉膜の表面構造に関する電子顕微鏡的研究 V : 特にカシ属の花粉について
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概要
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著者等は, カシ属花粉の14種類について, 電子顕微鏡によつて表面微細構造を明確ならしめることができたのである。この研究の結果によつて, Cyclobalanopsisに属する1群のウラジロガシ・シラカシ・アカガシ・ツクバネガシ・アラカシ・イチイガシの6種類は, Photo. 4に示すように花粉膜の表面は, 花野菜型に似た構造を有し, その隆起部の表面から, さらに微細な刺状物が突出していることを明確化した。なお, 刺状物の長さは約0.1〜0.3 μである。またLepidobalanusに属する1群のうち, カシワ・アベマキ・クヌギ・ミズナラ・ナラガシワ・コナラの如き落葉広葉樹の6種類は, Photo. 5に示すように, 花粉膜の表面は, 不規則に配列した, 粒状物によつておおわれ, その粒状物には微細な刺状紋が認められる。しかも, ところどころに小孔の散在していることが明らかとなつた。なお, イボ状物の長さは0.2〜1.0 μで, 刺状物の長さは0.1〜0.2 μである。おなじく, Lepidobalanusに属する, ウバメガシ・チリメンガシの如き常緑広葉樹の2種類は, Photo. 6に示すように, 花粉膜の表面は, 線状隆起物の間に, モミガラを散布したような模様を示している。なお, 線状隆起物の高さは0.1 μであり, モミガラ状隆起物のそれは0.3〜0.6 μである。したがつて, 上記2群のものとは全く異なつた表面構造を有することを明らかにすることができた。すなわち, 筆者等の研究結果によれば, 花粉膜の構造に関しては, カシ属の14種類は3つの異なつた型に類別するのが適切であると考えるものである。さらに, 今日までカシ属の花粉の発芽孔の膜面は, とう明状をなしてなめらかなというのみで, その表面構造は, 光顕によつては全くとらえることができなかつた。しかるに電顕によつて, これらの発芽孔膜は, 不規則で, しかも, かすかに網目状の起状を有し, なお全体に微小なイボ状物の散在していることを明らかならしめた。
- 1959-04-25
著者
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