花粉膜の表面構造に関する電子顕微鏡的研究 III
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
筆者等は, すでに10種の樹木花粉の表面微細構造について, 第I報・第II報として本誌上に発表した。本報には, ツガ・コウヤマキ・ヒノキ・フウ及びニワトコの5種を供試料としたのであるが, 特にニワトコの花粉は26年前に採取したものである。電子顕微鏡によつてえられた5種の花粉膜の表面微細構造の概要は次の通りである。1. ツガ(T.Sieboldii CARR.)花粉 : 表面は不規則に配列した隆状突起によつておおわれ, さらにその隆起部より指状突起物がでている。この指状突起物の長さは一定せず, 軟弱なためか曲りやすく, しかもほとんどはく離しない。この指状物の長さは約0.3〜2.1 μであつた。2. コウヤマキ(S.verticillata SIEB. et ZUCC.)花粉 : 表面はすべてコンペイトウ型粒状物によつておおわれており, この粒状物は既報のものと異なつて, ほとんどはく離せず, またある場合には粒状物がウネ状に連結して, 部分的に花野菜型ににた様相を呈することがある。粒状物の大きさは直径において約1.2〜3.1 μであつて, スギの約0.2〜1.0 μとくらべるとかなり大きい。3. ヒノキ(C.obtusa ENDL.)花粉 : 表面はコンペイトウ型粒状物によつておおわれており, この粒状物は第I及び第II報に記載したスギ, コノデガシワ, イヌガヤ及びコウヨウザンなどと同様, はく離する性質をそなえている。粒状物の大きさは直径約0.2〜1.0 μで, スギと同様である。4. フウ(L.formosana HANCE)花粉 : 表面はほぼ円形をなす浅いくぼみが一見網目のように配列している。また, 各円形のくぼみの間にはかなりの巾をもつた隆起部によつて連絡せられ, この連絡帯からさらに微細な刺状物が突出している。発芽孔はほぼ円形を呈し, 孔膜の表面にイボ状の小隆起物が散在している。発芽孔の直径は約8.5 μで, イボ状隆起物の直径は約0.2〜0.8 μである。5. ニワトコ(S.Sieboldiana BLUME)花粉 : 表面は不規則な円形をしたくぼみでおおわれており, 比較的単純な表面構造である。この花粉粒の発芽孔の部分と両極面にはくぼみが認められなかつた。
- 1958-04-25
著者
関連論文
- 花粉膜の表面構造に関する電子顕微鏡的研究 III
- 花粉膜の表面構造に関する電子顕微鏡的研究 V : 特にカシ属の花粉について
- 花粉膜の表面構造に関する電子顕微鏡的研究 IV
- 401. 瘠惡地の造林試験(第3報) : 石英粗面岩風化土壤に対する排水の効果と植栽樹種の適否(立地)(第68回日本林学会大会)
- 127.瘠惡地の造林試験(第2報) : 施肥, 土壤調整及び植栽樹種等に関する検討(第65回日本林学会大会)
- 138. やせ惡林地の造林試験(I) : クロマツ幼苗に対する肥料木の効果(第63回日本林学会大会講演要旨)
- 花粉膜の表面構造に関する電子顕微鏡的研究(II)
- 花粉膜の表面構造に関する電子顕微鏡的研究(I)
- 133. 花粉分析法による秋田スギの成因に関する考察(第63回日本林学会大会講演要旨)
- 赤松品種に関する研究(第 3 報) : 針葉の樹齢にともなふ変化について
- 14 赤松品種に関する研究(第1報) : アカマツ針葉の変異に関する調査
- 32 赤松品種に關する研究(第1報) : アカマツ針葉の變異に關する調査(林業の部)(昭和25年日本林學會春季大會)
- 裏日本泥炭地の花粉分析 : I 特にスギ分布の變遷史に關する研究 : 第1報 鳥取縣管原濕原
- 花粉分析による邦領樺太の樹種變遷に關する考察(IV)
- 花粉分析による朝鮮南部の樹種變遷に關する考察
- 花粉分析による邦領樺太の樹種變遷に關する考察(III)
- 花粉分析による邦領樺太の樹種變遷に關する考察(其II)
- 釧路附近の下部洪積世泥炭の花粉分析
- 花粉分析法による水蘚濕野の研究 : 水蘚濕野の表層に於ける花粉分布状態と現在森林構成状態との關係に就て
- 花粉の化石化に関する基礎研究 (I) : ヒマラヤスギ花粉の化学組成
- Taxodiaceae 花粉の同定について
- 日本における Taxodiaceae の絶滅期