クロマツ天然生林におけるアロザイム変異
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概要
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わが国の代表樹種の一つであるクロマツ(Pinus thunbergii PARL.)を対象に、遺伝資源の現地保存における効果的な保存箇所の選定のための基礎資料を得ることを主目的として、全国22箇所のクロマツ天然生林から採取した種子の雌性配偶体を用いて、6酵素種14アイソザイム遺伝子座による集団の遺伝的変異を分析した。その結果、次の知見が得られた。全林分の平均ヘテロ接合度(H_T)は、0.259であり、針葉樹の中でも比較的大きい。遺伝子分化係数(G_<ST>)は0.073で、多くの針葉樹と同程度の分化が起きていると考えられる。各林分の平均ヘテロ接合度(H_e)は、0.21〜0.27で、遺伝的変異の大きさの林分間の差は小さいが、西南日本の方が東北日本に比べ遺伝的に多様である。遺伝的な相違の程度により九州から東北を地域区分すると、大きくは、西南日本と東北日本の2地域に区分され、さらに細分すると、合計五つの地域に区分された。最低限、この五つの地域区分のそれぞれの地域において、クロマツの現地保存が必要と考えられる。種苗の配布においては、少なくとも西南日本と東北日本との造林事業刑の種苗の交流を差し控えることが肝要であろう。
- 一般社団法人日本森林学会の論文
- 1994-09-01
著者
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