必須脂肪酸代謝及び細胞応答に関する分子細胞生物学的研究
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概要
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エイコサノイドあるいはプロスタノイドと呼ばれる一群の生理活性物質は, 哺乳動物の必須の栄養成分のアラキドン酸に由来する化合物である. 必須脂肪酸には系列の異なる必須脂肪酸が存在するが, そのうち, n-6系列の必須脂肪酸は, 哺乳動物細胞内に取り込まれるとアラキドン酸に変換され, それを共通の母体にして複数の酸素添加酵素の反応が関与する生合成反応系, いわゆるアラキドン酸カスケード反応を介して多くの生理活性脂質が生成する(図1)^<(1-2)>. これらは, 極微量で強力な生理活性作用を示すが, 産生組織の周辺でのみ作用を及ぼす局所ホルモンといえる. これらの生体での寿命は非常に短いものである. エイコサノイドは, 必要に応じてアラキドン酸を元に生合成されることになる. すなわち, 細胞外の種々の代謝調節因子による細胞応答で活性化されるホスホリパーゼの作用で生体膜リン脂質からアラキドン酸が遊離し, この遊離アラキドン酸に酸素添加酵素のリポキシゲナーゼが作用してアラキドン酸カスケードが始まることになる. このカスケード反応は生理条件下では精密に制御されている. この制御がくずれてある種のエイコサノイド種の過剰生成に至ると, 血栓, 炎症, さらにアレルギーのような病態を生み出すことになる. 今や, エイコサノイドは, 細胞外及び細胞内の細胞情報伝達物質として多機能性を示す脂質メディエーターとなっている^<(3,4)>. 従って, アラキドン酸カスケード反応の調節に関する研究は, 医薬開発や栄養制御の点で重要である. 生体でのエイコサノイドの動態を明らかにするために必須な高感度酵素免疫測定法の開発研究や, 動物培養細胞株を用いた細胞応答でのアラキドン酸カスケード反応の分子調節機構に関して行ってきた研究を以下に述べる.
- 社団法人日本農芸化学会の論文
- 1996-11-01
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