サトウダイコンのそう根病株から分離されたサトウダイコンえそ性葉脈黄化ウイルス
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概要
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先に神沢と宇井^<12)>によって報告されたサトウダイコンそう根病罹病植物から病原の一つと考えられるウィルスが分離されたので報告する。このウイルスはイタリーでCanova^<5)>が記載したvirus A(仮称)と類似しているが,virus Aは未同定であり, また他に記載のないウィルスと考えられたので, 本ウィルスをサトウダイコンえそ性葉脈黄化ウイルス(beet necrotic yellow vein virus (BNYVV))と名付けた。BNYVVは土壌伝染性であり, 土壌中のPolymyxa betae Keskinと関連があるらしい^<12,19>)。そう根病汚染土壌にサトウダイコンを育成すると, ウィルス症状の出現率は低率であったが, 根では多くの個体からウイルスが検出された。BNYVVは汁液接種によって伝染したが, モモアカアブラムシ(Myzus Persicae (Sulzer))とジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani(Kaltenbach))による接種結果は陰性であった。16科84種の植物に対して汁液接種した結果, アカザ科15種とツルナおよびセンニチコウのみに感染した。感染植物の接種葉には, 局部病斑を生じたが, ときにサトウダイコン, ホウレンソウおよびBeta macrocarpaは全身感染するととがあった。全身的に感染したサトウダイコンには, 葉脈退緑, 葉脈黄化, 葉脈壊死, 葉の退緑斑点, モザイク, 奇形, 縮葉など各種の症状が現われ, 植物体はいちじるしく萎縮し, 根は肥大せず枯死することが多かった。BNYVVの粗汁液中での耐熱性65-70C, 耐希釈性10^<-4>, 耐保存性20Cで5日間, 4Cで8日間であった。粗汁液を凍結融解すると活性はいちじるしく低下した。ウイルス粒子は径20nmの桿状で長さ95-110nmに最大のピークがみられ, 他に255-270nmと370-390nmにそれぞれピークがあった。有機溶媒処理(四塩化炭素とダイフロンS-3)とポリエチレングリコールによる沈澱をくり返して部分純化した。この純化試料をウサギに注射したところ, 力価1,024倍の抗血清が得られた。このウィルス抗原と抗体とは寒天ゲル内拡散法でも反応した。なお, BNYVVはsoil-borne wheat mosaic virus, tobacco rattle virus, およびtobacco mosaic virusとの血清関係は認められなかった。Gibbs らによって提案されたウイルスの分類記号を用いるとBNYVVは, */*:*/*:E/E:S/(Fu)となる。
- 1973-09-30
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