文化拡散と知財保護の相克
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概要
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文化が変容を遂げながら時間と空間を越えて拡散してきたことの価値と, 現在の知財保護で主流となっている価値観には, 相容れない部分がある.この論文では, 主として文化学の観点から知財保護のあり方を見直す.まず, シャノンの情報理論にあてはめた「文化伝達の一般モデル」を示す.このモデルでは, 文化の伝達においては, 情報の符号化と復号化に使われる「コードブック」が情報の送り手と受け手で異なることと, 情報伝達行為を通して「コードブック」がダイナミックに上書きされることを重視する.つぎに, 「日本からみた文明モデル」を示す.このモデルは, 日本と西洋・アジアとの関係を規定するもので, 西洋に対する憧憬と超克あるいは追従, アジアに対する蔑視と抑圧あるいは支配という重層化された構造を持っている.明治以後の日本は, 現在もなおこのモデルに示されるような文明観を維持している.そして, 国際知財保護をめぐる日本側の言説は, 「日本からみた文明モデル」を忠実に踏襲したものであることを示す.これらの実例として, 海賊版によって日本のテレビドラマがアジアの若者に影響を与えていることなどを示す.海賊版が日本文化の流通のための, 強力な社会基盤となっている現状を分析するとともに, 文化拡散の運動を阻害しない知財保護のあり方を検討する必要性を指摘する.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 2005-03-19
著者
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