オオアカヒトデの初期発生
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概要
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1972年8月11日に串本海中公園センターの水槽内でオオアカヒトデLeiaster leachiiの自然放卵を確認し,受精卵から初期ビピンナリア幼生までの発生を観察した。受精卵は直径が140μの透明卵で,第1卵割直前には高さ40μの囲卵腔を有する。25-28℃において受精の1時間45分後に第1卵割が始まり,卵割型式は全等割・放射型である。胚は受精の4時間後には初期中空胞胚になる(Fig. 3)。やがて,胚表は皺状を呈するようになり,胚は皺胞胚期に達する(Fig. 4)。この皺は次第に複雑になり,皺胞胚形成開始の2時間半後に胚表は皺によって著るしい凹凸を呈する(Fig. 5)。まもなく胚表の皺は再び単純になり,ついに皺胞胚形成開始の5時間半後に皺は消失し,胚表は滑らかになる(Fig. 6)。切片標本によって皺胞胚期とその前後の胞胚の内部の変化を観察したが(Figs. 7, 8, 9, 10),オオアカヒトデの皺胞胚形成過程の概略はイトマキヒトデAsterinapectiniferaなどのそれと似ている。皺胞胚期終了の20分後には植物極より陥入が生じ,胚はのう胚期に入る(Fig. 11)。孵化は受精の6時間後におこる。受精の25時間後ののう胚は長さ,転がそれぞれ250μ,200μで,原腸の先端の両側方に体腔のうの原基が存在する(Fig. 12)。受精の35時問後には口陥が形成され,さらにその12時間後に消化器官は分化している。また後期のう胚には胃と小腸の間の左側後方に袋状の構造が認められる。やがて繊毛帯が現われ,胚はビピンナリア幼生になる。受精の70時間後の初期ビピンナリア幼生は長さ,転がそれぞれ500μ. 300μでり,大きさの異なる左右体腔のうを有する(Figs.14,15)。この観察によってオオアカヒトデは小型の卵を有し,その発生において皺胞胚期を経過したのちビピンナリア幼生になることが明らかになった。(第9回動物分類学今大会にて講演)
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