行動療法の基礎的研究(第3報) : 心理治療過程と自己強化行動
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概要
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本研究の目的は,カウンセリングを継続中のクライエントにおいて,抑うつ性の程度と自己強化行動量の関連を調べることにより,心理療法の過程および効果を行動理論的にとらえる一助を見出そうとすることにある。被験者であるクライエント(中学生以上の青年)は,まずカウンセリング開始時にBeck et alのDepression Inventoryにより高抑うつ群(19人)と低抑うつ群(14人)の2群に分けられた。さらに高抑うつ群については,カウンセリング開始後数か月ないし1年を経過した時期に再度の検査により,抑うつ性の低減が見られた抑うつ性軽快群(7人)と,ほとんど低減しなかった抑うつ性非軽快群(12人)に分けられた。実験材料としては,上記のDepression Inventory(翻訳版)と自己強化検査が用いられた。後者の検査では,視覚的弁別課題において被験者は,自分の反応に対して正解であるという確信を抱いたならば自己強化行動を採るように要請された。主な結果は次のとおりであった。(1) カウンセリング開始時における自己強化行動量は,低抑うつ群の方が高抑うつ群よりも多かった。(2) カウンセリング継続中の自己強化行動量については,低抑うつ群と抑うつ軽快群はともに抑うつ非軽快群よりも多かった。したがって,心理治療過程においてクライエントの抑うつ性を軽快させることは,彼の自己強化行動を促進するであろうことが示唆された。The purpose of this study is to investigate the relationship between depression and self-reinforcement behavior (SR) in adolescents under psychotherapy. Subjects were divided into high and low depression groups at pre-psychotherapy. Then the high depression group was divided into depression-relief (low depression) and depression-nonrelief (high depression) groups at post-psychotherapy. The Beck Depression Inventory was used to determine the degree of depression. And the test of SR was a visual recognition task. The main results are as follows: (1) Low depression group gave themselves significantly more SR than high depression group at pre-psychotherapy. And, (2) Depression-relief group gave themselves significantly more SR than depression-nonrelief group at post-psychotherapy. The results are discussed in terms of the inhibitory effect of depression in the reduced SR.
- 大阪教育大学の論文
- 1982-10-31
著者
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