子宮内膜癌発生に関する実験病理学的研究 : アンドロゲン不妊ラットを用いて

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ヒトの子宮内膜増殖症および子宮内膜癌(以下内膜癌と略す)のhigh risk因子の一つと考えられている無排卵性不妊症の動物実験モデルとしてandrogen不妊ラット(以下ASRと略す)を作製し,経時的に子宮内膜(以下内膜と略す)の病理組織学的検索を行ない,以下の結果を得た.1)正常対照ラット(以下NRと略す)の内膜は70〜750日齢において異常所見は全く認められなかった.ASRでは加齢に伴って,増殖性変化や庸平上皮化生的変化を起すものの頻度が高くなり,500〜750日齢では61例中8例の腺単純増殖,2例の腺異型増殖,15例の単純扁平上皮化生,1例の異型扁平上皮化生,さらに4例(6.6%)の癌(2例の腺癌,1例の腺扁平上皮癌,1例の扁平上皮癌)が発生した.2)ASRの内膜では増殖性変化や扁平上皮化生的変化が種々に共存していることに特徴があった.腺癌の2例はいずれも扁平上皮化生と腺異型増殖部分を伴っていた.扁平上皮癌の1例には異型化生と腺単純増殖部分を伴っていた.3)ASRにみられる種々の共存所見をもとに,ASRの内膜癌発生過程を考察した.すなわち,持続的無排卵状態であるASRでは,内膜が分泌能を欠き背の低い円柱上皮となり,一部は萎縮円柱上皮の方向へむかう,また一部の非分泌円柱上皮は増殖能を増し,多列円柱上皮となり,さらにその一部は腺増殖の方向へむかい,他の一部は扁平上皮化生的方向へむかう.そして,腺増殖の方向へむかったものの一部が異型腺増殖・腺癌に至り,扁平上皮化生の方向へむかったものの一部から異型化生・扁平上皮癌ができるものと推察した.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1984-12-01

子宮内膜癌発生に関する実験病理学的研究 : アンドロゲン不妊ラットを用いて

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