着床周辺期のラット子宮内膜におけるsex steroids, prostaglandinsのreceptor動態に関する検討
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概要
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着床現象の制御機構内では, 胞胚の受入れ側である子宮内膜の変化が円滑に行われることも重要であり, それに一連の内分泌因子が係わつているものと考えられる. そこでラット・モデルを用い, estradiol(E_2), progesterone (P_4)とprostaglandin E_2, -F_<2α>(PGE_2, PGF_<2α>の子宮内膜におけるreceptor (R)動態を同時に, 定量的に求めたうえ, 着床周辺期における相互の作用機序を検討し, 以下の成績を得た. すなわち, 1) 妊娠第0日から第9日の子宮角組織中のnuclear E_2R (E_2RN), -P_4R (P_4RN)の結合部位数(NBS)は平均0.15〜0.70, 0.15〜0.75pmol/mg proteinの間で推移する. 着床側のE_2RN量は着床が完了する第5日まで増加し, その後は減少して対側の非着床側より低くなる. 一方, P_4RNは着床直前から漸増し始め, 着床成立後明らかに増加して非着床部より高くなることが認められた. 2) 同期間におけるPGE_2-, PGF_<2α>-RのNBSは20.0〜50.0, 14.0〜40.0fmol/mg proteinの間で推移し, 着床側のPGE_2-R量は第5日まで漸減し低いが, 第6日から増加して非着床側より高くなる. 一方,着床側のPGF_<2α>-Rは非着床側より常に高く, 第3日から漸増し第6日にピークとなるが以後は急減することが認められた. さらに, 着床部とその周辺部とのPGsの特異的結合分布を比較したが, 3) PGE_2結合は第5日の着床部で減少し, 逆に周辺部で高いが, PGF_<2α>結合はこれと対蹄的に第5日の着床部で増加し周辺部で極めて低い. またindomethacinの結合分布は, 着床時に増加するが両部で相違がないことが認められた. したがつて, E_2, P_4とそれぞれのレセプターの結合反応の昂進に引き続き, 子宮内膜あるいは胞胚におけるPGsの生成・分泌, そして着床部の内膜におけるPGs-Rとの反応性の昂進が起こり, それが胞胚の接着・定位, 引き続く脱落膜化に段階的, 選択的に作用し, 着床現象の完成に関与しているものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-09-01
著者
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