糖尿病合併妊婦の胎児管理における羊水中phosphatidylglycerol定量の意義
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概要
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我々は,46人の糖尿病合併妊婦から羊水穿刺法によつて経腹壁的にあるいは分娩時に59例の羊水を採取し,羊水中のphosphatidylglycerol(PG)ならびにphosphatidylcholine(PC)を定量し,一部の羊水についてはL/S比測定,Shake testをも同時に行なつた.また羊水中カテコラミン(CAT)をradioenzyme法を用いて測定し,以下の結果を得た. (1)軽症型糖尿病(White分類でclassA,B.C)を合併した妊婦の羊水中PGは,32例中6例を除いた26例で正常妊娠例の平均値以下であり,このうち5例でRDSの発症がみられた.重症型糖尿病(White分類でclassD,F,R)合併妊婦13例のうち5例では,正常妊娠例よりも高値を示し,特にIUGRを伴つた4例は著しく高値を示した.羊水中PCは,軽症型も重症型もともに正常妊娠例と同様の濃度分布を示していた. (2)45人の糖尿病合併妊婦より分娩時に採取した羊水を用いて,PG,PC,L/S比測定,Shake testによる羊水分析を行なつたところ,羊水中PGの定量法が最も正確に新生児の呼吸機能を出生前に診断しえた. (3)生下時体重(SGA,AGAおよびLGA)と羊水中PGおよびPC量の相関を検討したところ,妊娠週数の如何にかかわらずSGA児ではAGA児に比較して羊水中PGは有意に高値を示し,妊娠37週以降のLGA児では羊水中PG値は低値を示した.PC値にはこのような生下時の児体重の差による変動は認められなかつた. (4)連続的に羊水穿刺を行なつて羊水分析を行なう必要のあつた糖尿病合併妊娠例で同時に羊水中のCATを定量したところ,羊水中PGの上昇に伴つてCAT濃度も有意に増加していた.
- 1985-09-01
著者
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