Trophoblastの生体内免疫的拒絶機構におけるOnclfetal Antigen-Iの意義
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概要
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Oncofetal Antigen-I(以下OFA-I)は胎児脳及び悪性腫瘍(主として外中胚葉組織由来)の共通抗原と定義されている.そこで一種の同種移植現象である妊娠の生理及び病理におけるOFA-Iと母体との免疫学的相関について検索し,さらに母子間の接点である絨毛組織におけるOFA-Iの移植免疫学的意義を検討したところ,次の結果を得た.1)OFA-IとHLAが異なる抗原であることを確認しえた.2)OFA-Iは正常胎児の筋,皮膚,肝,腎,肺,臍帯血中には認められず,胎児脳のみに陽性であつた.3)正常妊婦,褥婦の抗OFA-I抗体陽性率は妊娠前期44/88(50%),中期26/54(48%),後期45/82(55%),産褥期12/30(40%)であり健康男子及び未妊女子はそれぞれ0/30(0%),5/42(11.9%)であつた.4)流産例の抗OFA-I抗体出現率は10/36(27%),全奇胎,侵入奇胎ではそれぞれ21/27(78%),8/10(80%)であり,絨毛癌では28/32(86%)であつた.5)組織中のOFA-Iは正常絨毛16例,全奇胎絨毛5例とも,全例に認められなかつたが,流産絨毛2/6(33%),卵巣癌7/9(78%),子宮頚癌4/10(40%)に陽性であつた.6)間接螢光抗体法で流産絨毛におけるOFA-Iは不全流産例で4/10(40%),進行流産例では5/18(28%)に認められたが,正常絨毛5例すべて陰性であつた.絨毛細胞上のOFA-Iは主としてsyncytium細胞部に認められた.このようにOFA-Iは胎児脳に認められるが,臍帯血や他の胎児臓器に証明できない.しかし,妊娠により抗OFA-I抗体が高頻度に出現することから,そのoriginを絨毛細胞に求めた.その結果,流産では抗OFA-I抗体出現の低下と絨毛細胞上にOFA-Iの存在を認めるが,正常及び全奇胎絨毛ではOFA-Iは認められない.このことから絨毛細胞のin vivoの免疫的障害機構における抗OFA-I抗体の重要性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-09-01
著者
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