人胎盤の類線維素発現に関する臨床病理学的研究

概要

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妊娠初期正常絨毛, 同流産絨毛, 妊娠後期正常胎盤, 同中毒症胎盤257例につき類線維素の発現状況を観察し比較検討すると同時に, 類線維素発現率を測定し, いささかの考察を加え胎盤機能判定の為の一つの手掛りとした. その結果は以下に示す如くである. 1) 妊娠初期正常絨毛における類線維素発現は各部位により多少の違いを認めるが逐週的増加の傾向を認める. 2) 流産絨毛では退行変性の著しいもの程その発現は著明であるが, 絨毛の部位によっては必ずしもその様な傾向を認めない部位もある. 又その発現状況は流産様式, 流産開始後経過日数, 妊娠週数によって影響される. 3) 妊娠後期正常胎盤ではほぼ逐月的に増加傾向を認め, 予定日超過例では一層著しい. 4) 妊娠後期中毒症胎盤では正常胎盤と比較し極めて高度で, 臨床的に重症なもの程, 児死亡に至ったもの程その傾向は強い. 5) 類線維素発現率は妊娠後期正常胎盤3,78%, 予定日超過胎盤6.92%, 妊娠後期中毒症胎盤軽症6.01%, 同重症9.20%, 同特殊型7.63%, その平均7.61%であった. 6) 胎盤の類線維素発現は絨毛上皮の変化と, それに伴う上皮下結合織への血漿蛋白の浸淫が加わる事により形成される過程が推定される. 7) 類線維素発現は胎盤機能と密接な関連を有すると思われ, その多量発現は機能に良からぬ影響を及ぼすと考えられる.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1972-07-01

人胎盤の類線維素発現に関する臨床病理学的研究

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