卵丘形成機構にあずかる卵子因子について

概要

論文の詳細を見る
卵子の顆粒膜細胞増殖におよぼす影響を,卵巣疾患以外の手術に際して摘出された性成熟期婦人(23〜45歳)の卵巣35個を用いて検討した.摘出卵巣の組織標本上で,卵子および卵子に近い卵丘顆粒膜細胞層(卵丘細胞層)と卵子から離れた壁顆粒膜細胞層(壁細胞層)が明瞭に認められるantral follicle(直径0.4〜13mm)50個について,両顆粒膜細胞層間の増殖性をMitotic Index (MI)を用いて比較した.また,ヒトの卵子の顆粒膜細胞増殖に関する生物学的影響を推定して卵丘形成機構の検討を試みた. その結果,(1) 卵をとりまく卵丘細胞層のMI平均値は,8.2±0.5‰ (M±SE,以下同じ)で,壁細胞層の平均値(4.7±0.4)に比べ著しい高値を示した(p<0.001).また卵胞期後期と黄体期における卵丘細胞層でのMI平均値はそれぞれ12.9±1.0と6.6±0.6であり,壁細胞層各期の平均値7.7±0.7,3.7±0.4に比べて,各期とも卵丘でそれぞれ1.7倍,2.0倍の高値を示した.(p<0.01,p<0.001).(2) 卵丘および壁細胞層のMIは,それぞれ卵胞期後期において周期の他の時期に比べ最高値を示した.(3) 卵胞径3mmまでの発育卵胞においては,壁細胞層のMIは卵胞径と正の相関を示したが,卵胞径が3mm以上になるとそのMIはむしろ低下する傾向を認めた.しかし卵丘細胞層のMIは卵胞径3mmまではやはり卵胞径にともなって増える傾向を認めるが,3mm以上となっても低下がおこらず,ほぼ一定の高値を持続する傾向を認めた. 以上の結果からヒト卵胞における顆粒膜細胞の増殖性は,卵子から遠位の壁細胞層に比し卵子に接近している卵丘細胞層に恒に著明に高く,かつこの傾向は卵胞径の増大によっても不変であることが立証されたが,この事実は卵子に顆粒膜細胞の増殖を促進する因子が存在することを示唆するとともに,antral follicleにおける卵丘の形成はこの卵子因子に強く影響されているものと推察された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1985-07-01

卵丘形成機構にあずかる卵子因子について

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク