卵子の顆粒膜細胞増殖促進因子と伝達系
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概要
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マウス卵子の発育にともなう卵胞穎粒膜細胞(G-cell)に対する卵子からの増殖促進因子granulosa-cell growth factor(GGF)の存在とその伝達系路について^3H-Thymidine(^3H-Tdr)のup takeによるLabelling Index(LI)およびMitotic Index(MI)をもとに検討したので報告する.(1)卵子の成長過程はpreantral follicleの段階で進行し完了するが卵子の成長とG-cellのLI値および卵胞発育とは正の相関を示す.実際に卵子径が90μ前後となれば成長は止むがこの間の卵子の成長にともないG-cellのLI値は上昇し卵胞も増大する.卵子成長完了に続き卵胞はさらに発育しantralfollicleへ移行する.すなわちpreantral follicleの段階で卵子径が69μ以下の未熟卵胞では,LI値は低く,卵胞径も小さいが卵子の成長が開始するとLI値は上昇し,卵子の成長が完了して卵胞径が200μ以上になるとLI値はむしろ若干低下し,その後ほぼ一定高値を維持しつつantral follicleへと移行する.(2)卵子からの距離によるG-cellの増殖性の変化は(a)preantral follicleでは卵子から基底層にいたる各G-cell層のLIを連続的に計測すると,卵子径が75μ以下の未熟卵胞ではG-cell層構成は3層以下で卵子に接近しているにも拘らずLI値は著しく低値であったが,卵子径が80μ以上になるとG-cell層構成も4〜9層となってLI値は高まり,とくに卵子近位の細胞層にLI値は著しく高く卵子遠位に従って漸次低下した.(b)antral follicleでも卵子遠位の壁穎粒膜細胞層と卵子近位の卵丘穎粒膜細胞層とではG-cellの増殖性の差が著しく,前者に比し後者のLI,MIはともに約3倍以上も高かった.(3)また壁穎粒膜細胞層での卵胞腔に接する表面から基底層にいたる各G-cell層ごとのLI値は,卵胞腔近位に著しく高く,卵胞腔遠位に従って急激に低下した.以上の事実から未熟卵子ではGGFの分泌はほとんどなく,卵子の成長とともに次第に分泌されだし,卵子発育の終了まで高まることが推定された.またその後のantral follicleでもGGFは卵子周辺につよく作用して卵丘形成機構にあずかる一方,卵胞液を拡散して壁穎粒膜細胞に増殖的に働くことがつよく示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-01-01
著者
-
一戸 喜兵衛
北海道大学医学部産婦人科
-
守谷 修而
北海道大学医学部産婦人科
-
牧野田 知
北海道大学医学部産婦人科学教室
-
一戸 喜兵衛
北海道大学医学部産婦人科学教室
-
一戸 喜兵衛
東北大学 産婦人科
-
佐藤 春美
北海道大学 産婦人科
-
一戸 喜兵衛
川崎医科大学 産婦人科
-
高岡 波留人
北海道大学医学部産婦人科教室
-
一戸 喜兵衛
順天堂大学 産婦人科
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