肥満妊婦の栄養管理に関する基礎的, 臨床的研究

概要

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肥満妊婦の管理指針を作成する目的で, 標準体重より20%以上の高度肥満妊婦に対しては25kcal/kg×標準体重(kg), 20%未満の軽度肥満に対しては25kcal/kg×標準体重(kg)+妊娠前半期150kcal, 妊娠後半期350kcalの食餌管理を行つた. この結果より肥満妊婦151例の産科異常を体重増加度別 [体重減少群 (I), 体重増加群0〜5kg未満 (II), 5〜10kg未満 (III), 10kg以上 (IV)] に検討し, 更に肥満妊婦17例の糖代謝をインシュリン分泌能, 赤血球インシュリンレセプターの測定により検討した. 1) I, II群は20%以上の高度肥満症例が多かつた. 体重増加度別の産科異常 (異常分娩率, 遷延分娩, 平均出血量) においてI, II群は他群に比し有意に少なかつた (p<0.01). 平均胎盤重量はI群が軽い傾向にあつたが, 平均児体重には差はなかつた. Heavy-for-datesの頻度はI , II群で少ない傾向にあつた. 2) 妊娠中期の 75g OGTTの結果, 肥満群は普通・やせ群に比し血糖値は高い傾向にあつた. IRI値は肥満群ではすべての時点で普通・やせ群に比し有意に高値を示した (p<0.01). 3) 赤血球インシュリンレセプター結合数 (mean±SD) は同一症例で妊娠末期240.9±85.4/cell, 産褥期362.4±187.7/cell と有意に妊娠末期は減少していた (p<0.025). 普通, 肥満, やせ群を比較すると肥満群は有意に減少していた (p<0.025). 耐糖能異常群の妊娠末期レセプター結合数は正常群に比し有意に減少していた (p<0.025). 結合親和性は各群差を認めなかつた. 以上の成績より, 肥満妊婦はインシュリン抵抗性の状態にあり, 産科異常も多いことが判明した. また, 高度肥満妊婦は妊娠経過中の摂取カロリーを25kcal/kg×標準体重にコントロールすることにより体重は増加せず, むしろ減少傾向になるが, その結果, 母児の産科異常は減少することが明らかとなつた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1992-02-01

肥満妊婦の栄養管理に関する基礎的, 臨床的研究

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