HTLV-I母児感染におけるキャリア母の児のキャリア化におよぼす因子について

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Human T cell leukemia virus type I (HTLV-I) 母児感染は現在までの研究の集積により, 母乳を介した経路が最も重要とされている. しかし, 母乳哺育児のキャリア化率は抗体法にて検索した諸家の報告によると, 10〜40%であるから, 残りの60〜90%の児は母乳哺育を行つても感染していないことになる. そこで, 我々はこの児のキャリア化におよぼすキャリア母の因子を明らかにするため, キャリア母のHTLV-I抗体価, p40^<tax>抗体, PCR (polymerase chain reaction)法による provirusの検出及びその定量化, すなわち provirus copy数の検索を行つた. 更に授乳期間の検討も加えた. また, 人工乳投与を行つた例 (人工乳投与)と凍結解凍処理を行つた母乳を投与した例 (凍結母乳投与)においても児のキャリア化について検討を行つた. その結果, 1) 母乳哺育児群のキャリア化率が6.1%, 凍結母乳投与児群が7.7%, 人工乳投与児群は0%であつた. これらの検索はすべて抗体法にて求めた. 2) 児のキャリア化に最も相関性を示した因子はキャリア母の provirus copy数であつた. 次いでp40^<tax>抗体が高い関連性を示したが, 有意差はみられなかつた. 3) キャリア母の抗体価, 授乳期間とは相関性を示さなかつた. 以上, 我々の研究成績では母乳感染が他の報告と比較して低かつた. また, 凍結母乳と人工乳投与の児を合わせた感染率が2.8%認められ, 母乳感染以外の子宮内・産道感染が示唆された. この子宮内・産道感染率と母乳感染率とは有意差がみられなかつた. このことは, 児のキャリア化率をPCR法も含めて検討した結果でも同様であつた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1992-02-01

HTLV-I母児感染におけるキャリア母の児のキャリア化におよぼす因子について

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