巨大卵巣嚢腫液の生化学的研究

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卵巣嚢腫内容液についての調査は数多くなされているが, 液性血型物質についての研究を除けば, 化学的調査は非常にわずかしか報告されていない. 1951年Odinは卵巣嚢腫内容液の蛋白組成全体について, 系統的研究を行い, 嚢腫内容液を病理学的診断, 化学的, 物理学的分析に従って, 漿液性, 偽ムチン性, 膠様性の3つのグループに分類した. 我々は手術が行われるまで7ヵ月間継続的に巨大卵巣嚢腫の蛋白組成, 特に糖蛋白について研究を行った. 得られた嚢腫内容液は微かに淡黄色, やや粘液性, 均質な液体であり, 手術時得られたものは膠様性物質をかなり含んでいたが, 我々の観察期間中ほとんど変らなかった. 蛋白, ヘキソース, シアル酸の含量は0.5〜1.0g/dl, 40〜50mg/dl, 5〜14mg/dl(膠様性のものを除いて). 嚢腫液の凍結乾燥物はへキソサミン, ヘキソース, シアル酸を平均モル比1:1:0.13の割合で含んでおり, 膠様性のものも大体同様の比率であった. これらの結果は我々が実験した巨大卵巣嚢腫がOdinの偽ムチン性卵巣嚢腫に属することを示した. 本例のべロナール緩衝液中で行った濾紙電気泳動では血清(Clinical Chemistry Control Serum)とはほとんど変らぬパターンを示したが, DEAE-セルローズ・カラム・クロマトグラフィーでは著しい差異があった. DEAE-セルローズ・カラム・クロマトグラフィーによる新しい卵巣嚢腫の分類の可能性を示した.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1965-07-01

巨大卵巣嚢腫液の生化学的研究

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