人子宮腟部偽糜爛上皮細胞の周期性変化に関する電子顕微鏡的研究 (臨床的研究)
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概要
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著者は先に, 人子宮頚管内膜上皮細胞の周期性変化について電子顕微鏡的に検索したが今日子宮腟部偽糜爛に関連して, Meyerの所謂第1期治癒機転に伴う扁平上皮化生の問題や, 子宮頚癌が扁平円柱上皮境界より円柱上皮領域に原発するのではないか, という事が問題になつている. それ故子宮腟都糜爛は, 頚管内膜よりも増殖及び分泌の態度がかなり強調して観察されるかも知れないし, 又周期性変化も充分期待出来るわけである. 著者は以上の目的の下に, 成熟婦人の各月経周期及び妊娠期の偽糜爛上皮細胞について, 超薄切片を用いて電子瓢微鏡的に研究した. 成熟婦人の卵胞期・排卵期・黄体期・月経期(第1〜3日目)及び妊娠期(妊娠3・5カ月)子宮腟部偽糜爛上皮を, 基礎体温曲線その他を参考として剔出し, 1%オスミウム酸燐酸緩衝液1〜2時間固定, エタノール系列脱水後樹脂包埋し, 超薄切片とした. 研究成績並びに結論 : 1)成熟婦人偽糜爛上皮細胞は, 電子顕微鏡的に繊毛及び分泌の2細胞が識別され, 各細胞間はdesmosomeにより接合されている. 2)繊毛細胞の分布は非常に稀であるが, その構造は他の人性管系に認められたものと略々同じで, 微細構造上特別の周期性変化を示さない. 3)分泌細胞の特徴とする分泌顆粒は, 類円形で0.5〜1μ大の電子密度の低い微細網様構造として認められる. この分泌顆粒は卵細胞期に著明に多く, 排卵期に分泌顆粒を充満した細胞質が腺腔内に膨隆・絞扼・離断してapocrine様分泌を示し, 黄体期では分泌顆粒は少く, 月経期にやゝ多く認められる. 4)分泌細胞の糸粒体は約0.5μ大で楕円形を呈し, 卵胞期に小型のものが少数見られ, 排卵期には正常大でやゝ少く, 黄体期では膨化型で多く, 月経期にやゝ小型のものが中等量認められる. 5)分泌細胞のGolgi野は卵胞期に著明に発達し, 排卵期では中等度の発達を示し, 黄体期及び月経期では痕跡的である. 6)分泌細胞の粗面小胞体は卵胞期によく発達しているが, 排卵期では中等度の発達を示し, 黄体期及び月経期では僅かに認められる. 7)分泌細胞は, 人頚管内膜分泌細胞と略々同様に分泌顆粒・Golgi野・糸粒体及び粗面小胞体の消長を通じて, 排卵期を頂点とする周期性変化を示す. 8)妊娠期(妊娠3〜5カ月)分泌細胞は, 多量の分泌顆粒を有し, これを充満した細胞質が腔内に突出・離断する. 9)黄体期偽糜爛上皮基底部に, 細繊維物質を含む細胞が出現する.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1964-01-01
著者
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