妊娠がHBウイルスキャリアーにおよぼす影響
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概要
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妊娠がHBVキャリアーにおよぼす影響をGOT、GPT、e抗原、e抗体を指標として研究した.e抗原陽性143例、e抗体陽性80例、e抗原抗体いずれも陰性46例、合計269例の妊婦を対象とし、妊娠前・中期、妊娠後期、産褥1日、産褥1ヵ月の各時期にHBs抗原、e抗原、e抗体、GOT、GPTを測定した。GOT and/or GPTが異常値を示した妊婦の頻度は、e抗原陽性群では妊娠中16.2%、産褥1日10.3%、産褥1ヵ月43.0%であった。一方e抗体陽性群では妊娠中4.1%、産褥1日6.5%、産褥1ヵ月22.9%であった。以上のようにGOT、GPT異常例はe抗原陽性群に高頻度であり、また両群とも産褥1ヵ月の異常頻度が妊娠中の異常頻度に比べ有意に高かっ.GOT and/or GPT 100mU/m1以上の症例を選出して頻度をみると、e抗原陽性群では妊娠前。中期6.3%、妊娠後期0.8%、産褥1ヵ月21.5%であったが、e抗体陽性群では、妊娠、産褥を通して0%であった。個々の症例の妊娠産褥期のGOT、GPT変動パターンにより下記のごとく四つの型に分類したI型:全期を通じて正常、II型:妊娠中は正常で産褥期に肝炎を発症、III型:妊娠中にGOT、GPTが高く妊娠末期に寛解し産褥期にリバウンドする、IV型:III型のリバウンドのない型。e抗原陽性群ではI型59.3%、II型20.4%、III型14.8%、IV型5.6%、e抗体陽性群ではI型89.5%、II型10.5%、III型、IV型0%であった。産褥期にGPTが上昇した例では892mU/mlが最高であり、産褥3カ月で100mU/m以下に落ち着く例が多かった。産褥期に肝機能が悪化した例で次の妊娠時にseroconversionしていた例が16例中2例、seronegativeが16例中4例に認められた。この6例中5例は次回妊娠中、肝機能は正常となった。一方産褥期に悪化しなかった症例では、次回妊娠時にe抗原抗体系に関係なく肝機能も正常であった。妊娠中の肝機能の寛解と産褥期のrebound、はそれに伴うe抗原抗体系の変化等は、妊娠中に増加するcorticoidの影響であろうと考える。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-01-01
著者
-
鈴木 公雄
長崎市立市民病院
-
田川 博之
長崎市立市民病院
-
王 志洪
長崎市立市民病院産婦人科
-
河野 雅洋
長崎大学医学部産科婦人科学教室
-
藤田 晃
日赤長崎原爆病院
-
河野 雅洋
長崎市立市民病院産婦人科
-
藤田 晃
長崎市立市民病院産婦人科
-
安日 泰子
長崎市立市民病院産婦人科
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