不育症婦人における自己抗体に関する研究
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概要
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不育症203例のうち自己抗体が陽性の45例(22.2%)を, 抗核抗体のみ陽性の27例(A群)および抗核抗体の有無にかかわらず抗リン脂質抗体が陽性の18例(B群)に分類した. A群では, 延べ98回の既往妊娠のうち86回が流死産であり, その時期は妊娠12週未満が78回(90.7%)および12週以降が8回(9.3%)であった. B群では, 延べ67回の既往妊娠のうち62回が流死産であり, その時期は妊娠12週未満が37回(59.7%)および12週以降が25回(40.3%)であった. 妊娠12週以降の流死産の頻度はB群がA群に比較して有意に高率であった(p<0.001). 治療期間における妊娠はA群16例およびB群12例に認められた. A群では, 早期流産であった3例(2例は染色体異常)を除く13例はすべて正期産で, 児の発育は正常(appropriate for gestational age : AGA)であった. またB群12例では, 副腎皮質ステロイド・アスピリン併用療法を行い, 8例で生児を得たが, 2例は妊娠中期に子宮内胎児死亡を, また他の2例では早期流産(いずれも染色体異常)を来した. 抗リン脂質抗体のうちβ_2-グリコプロテインI非依存性抗カルジオリピン抗体(β_2(-)ACA)が陽性であった5例は, すべてループス・アンチコアグラント(lupus anticoagulant : LA)は陰性で児の発育はAGAであった. 一方, β_2-グリコプロテインI依存性抗カルジオリピン抗体(β_2(+)ACA)が陽性であった10例のうち9例はLA陽性であり, たとえ生児が得られても早期産で児の発育は異常(small for gestational age)であった. β_2(+)ACAが陰性でLAが陽性であった2例のうち, 1例は正期産でAGAの児を得たが, 他の1例は妊娠中期子宮内胎児死亡を来した. 以上の結果より, 抗核抗体およびβ_2(-)ACAと不育症との関連性は小さく, β_2(+)ACA およびLAと不育症(とくに妊娠中期以降の胎児死亡)との関連性は大きいことが示唆された.
- 1994-11-01
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