陣痛発来周辺の血中性ステロイド動態
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概要
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Radioimmunoassay (RIA)の開発により,血中steroidの測定が容易となり,同一例について継続して測定することが可能となつた.そこで陣痛発来機序の検索の意味も含めて,陣痛発来周辺のprogesterone (P)およびestrogen 3分画(E_1,E_2,E_3)を測定した.測定にはcompetitive protein binding assayあるいはRIAを使用し,正常分娩をした17例について検索した.妊娠9ヵ月から週1〜2回採血し,さらに分娩前後は陣痛開始時,子宮口全開大時,分娩直後,2時間後,12時間後,24時間後および48時間後にそれぞれ採血した.血中P値が陣痛発来前に明らかに減少したのは7例中2例にすぎず,3例は増加傾向を示した.血中E_1,E_2,E_3の和(TE)は39週まで増加し(94.7±44.3ng/ml),以後多少の動揺を示していた.しかし継続例でみると,15例中7例は増加しつつ陣痛が開始し,あとの8例は陣痛発来直前で減少するか不変であつた.実効E・P比(E/E+P)をみると,陣痛発来前3週間は一定の傾向はなく,陣痛開始後やや増加した.したがつて,陣痛発来とE・Pの変化との間に,明らかな関係は得られなかつた. 分娩前後の血中P動態は,陣痛前に比べて,陣痛が開始すると7例中4例では減少し,全開大時には6例に減少を認めた.その後分娩時にはやや増加するが,胎盤娩出後から12時間後にかけて急激に減少し,この時期にはすでに9.8ng/mlと黄体期レベルに達した.以後48時間まで黄体期レベルの範囲内で徐々に減少した.血中TEは陣痛が開始すると,14例中11例において減少をみとめ,全開大時より児娩出時にかけて一旦増加した.その後はP同様12時間後までは急激な減少を示し,以後,なお非妊時の10倍の値ではあるが、徐々に減少した.分娩後の下降曲線が二相性をなすことから,胎児-胎盤由来の血中steroidは,12時間以内にほぼ尿中に排泄あるいは代謝され,その後の血中steroidは卵巣由来のものであろうと推察された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1976-02-01
著者
-
小池 敏明
長崎大
-
一瀬 宏
長崎大学医学部産科婦人科学教室
-
田川 博之
長崎市立市民病院
-
正岡 尚
長崎大学医学部産科婦人科学教室
-
村上 誠
長崎大学医学部産科婦人科学教室
-
三浦 清巒
長崎大学医学部付属病院産婦人科学教室
-
田川 博之
長崎大学医学部産科婦人科学教室
-
森 淳躬
長崎大学医学部産科婦人科学教室
-
小池 敏明
長崎大学医学部産科婦人科学教室
-
河野 前宣
長崎大学医学部産科婦人科学教室
-
三浦 清巒
長崎大学医学部産科婦人科学教室
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