ヒト胎盤絨毛細胞表面の負電荷とその生物学的役割
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概要
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ヒト胎盤絨毛細胞の膜表面に存在する負電荷の生物学的役割を解明するために,各種のヒト胎盤絨毛について,その基本的な表面形態,糖蛋白の分布,表面負電荷の存在形態等を観察検討し,以下の結論を得た.1)ヒト胎盤絨毛細胞膜表面には,糖蛋白のシアル酸に由来する負電荷が存在する.この負電荷は15-20mμの径を持つだ粒子状のaggregateに存在し,隣接するaggregateは互いに50-100mμ離れて極めて観則正しく配列する.2)トロホブラストの膜表面に存在する負電荷のもう一つの大きな特徴は,荷電量が極めて大きいことである.これは,胎盤絨毛の表面微細構造が複雑に入りくんでいて表面積が広いこと,又単位長さあたりの負電荷が大きいことによるが,その結果トロホブラストの表面には強力な電場が形成されると考えられる.3)正常妊娠初期絨毛は,末期絨毛に比して有意に大きな負電荷を持つ.4)自然流産より得た絨毛では,細胞自体の変性が軽度であっても膜表面の糖蛋白は散在するものをまとめて,より著明なaggregateを形成するようにたる.しかしフェリチン粒子の附着数は少なくたるので,逆に負電荷は減少することが認められた.変性がすすむと膜表面負電荷ぽ著明こ減少し,糖蛋白の規則的配列の乱れが高度となる.5)部分奇胎と全奇胎とを膜表面構造,糖蛋白分布,負電荷の存在形態より比較すると,部分奇胎は流産絨毛に,全奇胎は正常絨毛細胞に類似している.以上より,ヒト胎盤絨毛細胞膜表面の負電荷は、2つの大きな生物学的役割を持っていると考えられる.第1に,静電気的な反撥力によってリソバ球が胎盤絨毛に近づくのを妨げ,その結果同種移植片であるトロホブラストをリソバ球が抗原として認識する事を不可能にする.第2に,トロホブラスト表面の糖蛋白を隣接する糖蛋白との間に働く静電気的な反撥力で,膜表面上の一定の位置に保たせることである.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-04-01
著者
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