正常妊娠経過中の血液凝固線溶系およびCold insoluble globulinの動態に関する研究

概要

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妊娠経過中は,生理的な過程であっても血液凝固光進,線溶抑制傾向にあるといわれている.しかし,その病態生理の詳細については,不明の部分も少なくない.そこで著者らは,正常妊娠経過中の血液凝固線溶系およびこれらの阻止系とCIGの動態について詳細に検討した.対象:コントロールの非妊婦30例および年常妊婦の初期より末期まで計270である.検体は肘静脈より採血した.測定項目:血小板数,Fbg量,FXII,IX,VIII,X,VII,V,II,XIII,ELT,eug+SKLA(Std),Plg,SFMC,FDP,AT-III,C_1-INA,α_2-PI,α_2-M,α_1-ATとClGなどである.成績:正常妊娠経過中の血液凝固因子活性は,内因性のFXII,IXは12-16週頃より著しく亢進し,FVIIIは亢進傾向,さらに24-32週以後に著しく亢進した.外因性のFX,VII,IIは24-28週頃より有意な活性の亢進を示した.FVは有意な変動なく,FXIIIは16-20週頃より低下傾向を示し,36-40週に著しく低下した.血小板数は変動なく,Fbgは4-8週頃より有意な増加を示し,24-28週以後にさらに増加した.線溶系では,ELTは4-8週頃に有意な延長傾向を示すようになり,16-20週以後にさらに延長した.eug+SKLA(Std)やPlgは8-12週頃より軽度増加傾向を示した.SFMCは16-10週頃よりしだいに増加傾向を示した.FDPは24-28週にかけ著しく増加した.インヒビター系のAT-III,α_2-PI,α_2-Mは変動なく,α_1-ATは6-10週にかけ増加し,さらに22-26週以後に著しく増加した.C_1-INAは12-16週頃よりしだいに減少傾向を示し,32-36週以後に減少した.CIGは有意な変動はなかった.この成績より,正常妊娠中においては内因性凝固活性の亢進,外因性のそれも軽度亢進,FXIIIの減少傾向,SFMCの上昇,FDPの増加がみられ,やはり妊娠中は凝固性亢進の状態といえる.一方,線溶系ではELTの著しい抑制状態におかれているが,ELTやPlgの漸増とインヒビター系のα_2-PI,α_2-Mは有意な変動なく,またα_1-ATの増加などの動態より線溶活性は総合的に抑制状態にあることを解明した.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1982-03-01

正常妊娠経過中の血液凝固線溶系およびCold insoluble globulinの動態に関する研究

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