高年令妊娠と染色体異常に関する研究

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近時,母親の高令化にともなつて先天異常児の出生頻度が加速的に増加してくる事実が次第に明らかとされてきたが,この原因を究明するため,卵巣機能の衰退の著明期である40才以後閉経までの婦人で妊娠早期に人工中絶をうけた資料,とくに胎児を対象に,その染色体上の異常について調査した. 実際には35才〜48才までの高令妊婦における妊娠早期の人工中絶資料で,流産徴候を全く認めなかつた169例の胎児組織の染色体異常の発生頻度や種類について検討し,157例(92.9%)の核型分析に成功した. (1) 染色体核型分析をなしえたこの157例中にみられた異常は7例で,その母親の年令別に発生頻度を観察すると,35〜39才では1.6%(1/63例),40〜44才では3.7%(3/82例)と高くなり,閉経前にあたる45〜48才にいたつては25.0%(3/12例)と甚しく高い頻度がみられた. (2) 染色体異常の種類は何れもtrisomyであり,年令別では35〜44才で4例とも21-trisomy, 45〜48才で2例は18-trisomy, 1例は15-trisomyであつた. (3) 一般に45才以上の母親からの新生児の性比は男性が高いと言われるが,今回の研究からは高令妊娠での性の傾りはみられなかつた. 以上,母親の高令化につれ染色体異常妊娠の増加が充分推測され,ことに閉経前の婦人では驚異的な高頻度となることが窺われた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1978-05-01

高年令妊娠と染色体異常に関する研究

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