子宮内膜腺癌細胞株(EI)に対するモノクローナル抗体の作成

概要

論文の詳細を見る
近年, 子宮内膜腺癌は増加傾向にあるが, その診断や治療判定, 再発予知に有用でかつ特異的な腫瘍マーカーはない. また, 子宮内膜腺癌は, ホルモン依存性であることが知られている. しかしその発癌機構の詳細は不明である. そこで, 子宮内膜腺癌の診断や治療判定に有用なマーカーの開発と子宮内膜腺の発癌機構を解明する目的で子宮内膜腺癌に対して特異的なモノクローナル抗体を作成した. 今回, 我々は正常子宮内膜上皮と子宮内膜腺癌に対して反応性の異なるモノクローナル抗体を選別し各組織との反応性を検討した. 免疫原は, 当教室にて樹立した子宮内膜腺癌細胞株(EI)を用いた. 免疫をしたBalb/Cマウス脾細胞と polyethylene glycol (Mr4000)を用いて mouse myeloma細胞(P3U1)との細胞融合を施行した. スクリーニングは, 原腫瘍細胞株を用いた cellular enzyme linked immunospecific assay法を施行して選別し, 限界希釈法にてクローニングを行った. その結果, 正常子宮内膜腺とは反応せず子宮内膜腺癌とのみ反応する抗体を産生するモノクローナルハイブリドーマ株を得た. Moab 3H2抗体の免疫グロブリンサブクラスはIgG_1であり, 認識する抗原分子は36Kdの蛋白であることが示唆された. 免疫組織化学染色では, 高分化型, 中分化型子宮内膜腺癌に強い染色性が認められたが, 低分化型子宮内膜腺癌, 子宮頚部扁平上皮癌, 子宮頚部腺癌, 卵巣癌, 増殖期及び分泌期の正常子宮内膜腺上皮ではほとんど染色性を認めなかった. また, 他臓器の悪性病変組織でも染色性は認められなかった. よって, Moab 3H2抗体は高分化型, 中分化型子宮内膜腺癌に特異的であることが示唆された. Moab 3H2抗体の認識する抗原を解析することは, 子宮内膜の発癌機構や子宮内膜腺癌の分化機能の解明に役立つものと思われる.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1995-07-01

子宮内膜腺癌細胞株(EI)に対するモノクローナル抗体の作成

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク