卵巣癌の予後と凝固線溶能

概要

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寛解導入化学療法を施行した卵巣癌患者13例に対して血小板数, fibrinogen, PT, APTT, Hepa T, ATIII, α_2PI, FDPに加え分子マーカーであるfibrinopeptide A (FPA), fibrinopeptide Bβ_<1-42>(FPBβ_<1-42>), fibrinopeptide Bβ_<15-42> (FPBβ_<15-42>)を化学療法前と治療効果判定時に測定し, 有効(PR. CR)群と無効(NC. PD)群の癌化学療法による血液凝固線溶能の改善性と長期的予後が, どのように関連するかを検討した. 1) 血小板数は, 両群とも治療後に減少傾向を, またAPTT, Hepa Tは, 両群で治療後に増加傾向を認め, 予後による差を認めなかった. 2) fibrinogenは無効群で治療後に上昇し, 有効群に比して有意に高値となり(p<0.05), ATIIIは無効群で治療後に減少し, 有効群に比して有意に低値となった(p<0.05). またα_2PIも有意差はないが無効群で治療後に有効群に比してやや減少する傾向を認めた. FDPは治療後に有効群で正常値に復するが, 無効群では上昇する例が多くみられた. 3) 分子マーカーのFPA, FPBβ_<1-42>, FPBβ_<15-42>は治療後に無効群で上昇し, 有効群に比して有意に高値を示した(p<0.05). 4) 再発群ではATIII, α_2PIは寛解時に比し有意に低下し(p<0.05), また, PTも有意差はないが低下傾向を認めた. そしてFDPは陽転化する症例が多く, FPBβ_<1-42>, FPBβ_<15-42>は上昇する傾向を認めた. 以上より進行期卵巣癌患者において, 治療後寛解を得た症例では, 凝固線溶能の改善も認めるのに対し, 予後不良例では, 治療後も凝固線溶能の増悪傾向が認められた. とくに, 治療後のfibrinogen, PT, α_2PI, ATIII, FDP, FPA, FPBβ_<1-42>, FPBβ_<15-42>の変動が予後と密接に関連し, 治療効果を知るうえで補助診断となりうることが示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1990-04-01

卵巣癌の予後と凝固線溶能

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