ノリ面緑化現場における外来シマカンギクと在来ノジギクとの自然交雑事例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
愛媛県上浮穴郡小田町地内において, 緑化が施された大規模ノリ面下部に最近, シマカンギクルDendranthemaindicum 個体群(染色体数2n = 36および2n = 36+1 B,黄色舌状花)が見出された. 緑化現場に出現し周囲に在来シマカンギクの自生地がないことや, 倒伏した茎から不定根を出す性質が中国中南部に広く分布するシマカンギク(細分する見解では変種ハイシマカンギクvar. procumbens)に一致し在来のシマカンギクにはみられない特徴であることから, このシマカンギクは外来のものと推定された. 頭花の変異が大きい別の個体群では, 白色舌状花で頭花の大きい個体の多くが2n = 45の五倍体であったことから, 外来シマカンギクと周囲に自生するノジギクD. occidentalijaponense(2n = 54,白色舌状花)との間で自然交雑が起こり,雑種個体群が形成されていることが推察された. また2n = 38などの高四倍体が観察されることから, 五倍体雑種とシマカンギクとの間で戻し交雑が起こっていることも推察された.さ らに別の個体群では, 白色舌状花を持つ2n = 63の七倍体雑種が1個体見られたが, この個体はシマカンギクの非減数(または倍加)配偶子(n = 36)とノジギクの正常配偶子(n = 27)から生じたものと解釈できる. これにはシマカンギクが花粉親の場合と, ノジギクが花粉親の場合の二通りが考えられ, 前者であるとすれば, 外来種から在来種への遺伝的干渉が起きたことになる. 今回の報告は外来キク属と在来キク属との自然交雑が初めて確認された例と考えられ, 在来ノジギクの遺伝的汚染が懸念される.
- 日本生態学会の論文
- 2003-12-30
著者
関連論文
- 富山県フロラ資料(11)
- 富山県フロラ資料(10)
- 絶滅危惧種ミズネコノオおよびミズトラノオの染色体数
- カラフトエンビセンノウとツクシマツモト間の種間交雑 (Lychnis 'Karafutoenbisenno' × L. sieboldii) による雑種作出およびその形質調査
- 携帯型マンセル色票計による野外でのトウツバキの花色測定
- 個体群が拡大したノリ面緑化現場の外来シマカンギク(キク科)
- 古典園芸植物ツワブキの特性評価と保全、育種に関する研究 : (第3報)ツワブキ園芸品種の細胞遺伝学的研究
- 古典園芸植物ツワブキの特性評価と保全、育種に関する研究 : (第2報)ツワブキ園芸品種の人為分類と核DNA量
- 古典園芸植物ツワブキ--歴史と現存品種
- ツワブキの核型に関する新知見
- 日本に現存するセンノウの倍数性
- キクとの雑種を含むワカサハマギク個体群の14年後の追跡調査
- ナデシコ科センノウ(Lychnis senno)およびその近縁種の花弁におけるアントシアニジンおよびアントシアニン分析
- 日本及び中国産シマカンギクの染色体CMA/DAPI蛍光分染パターンの比較
- 六倍体ノジギクとウラゲノギクの染色体CMA/DAPI蛍光分染パターンの比較
- リボソームDNAのRFLP分析に基づくマメ科サイトウ属およびササゲ属6種の系統類縁関係
- 日本産キク属の種 : 細胞学および細胞遺伝学からみたその実体
- 絶滅危惧種ミズネコノオおよびミズトラノオの染色体数
- 中国雲南省西双版納におけるBegonia palmata var. bowringiana(紅孩児、シュウカイドウ科)自生地の記録、および採集された6個体の染色体数
- 中国産シュウカイドウ属の細胞学的研究 : II. Sect. Platycentrum 数種の染色体数
- 雲南省産植物に関する細胞学的知見(1)雲南省初記録の腐生ラン、ヒメノヤガラ
- 3倍体センノウを用いた種間雑種の作出
- 氷ノ山(兵庫・鳥取県境)で最近みつかったイワギク(キク科)
- 日本に現存するセンノウの特性と園芸的利用
- ホトトギス属植物における不定胚形成および植物体再生
- 富山県立大学水田跡地のビオトープに関する調査・研究-1:ビオトープ化初期の植生と植物相-
- 最近道路法面に発見されるキクタニギクとイワギクについて
- ノリ面緑化現場における外来シマカンギクと在来ノジギクとの自然交雑事例
- 富山県フロラ資料(7)
- 中国雲南省楚雄市の常緑広葉樹二次林におけるトウツバキ個体群の観察
- 昆明植物園に生じたLiparis cathcartii(二褶羊耳蒜、ラン科)個体群の観察
- 富山県
- ユキバタツバキの三倍体--井口村指定天然記念物「丸山の大ユキバタツバキ」の染色体数調査結果とフィールドワークから
- 富山県におけるホクリクムヨウラン(ラン科)の自生地
- ホクリクムヨウランに関する細胞学的知見
- ワカサハマギクの自生地とその現状
- 岩手県で発見されたイワギク八倍体とその進化史的意味
- 中国雲南省・広西壮族自治区における2010年度シュウカイドウ属調査の記録
- 準絶滅危惧種ワカサハマギクの減少要因とレッドリストの再評価 : 個体群の約30年後の追跡調査から
- ミズゼニゴケはやはり日本に産する