美術理解を生む教育の実現 : 鑑賞と批評 (リサーチ・フォーラム2000 : 第2回美術科教育学会課題研究会)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
今回のフォーラムの意図は学校美術教育に美術批評を取り入れることで,学習内容を今日的美術状況と結びつけようとするものと言えるだろう。美術作品や美術状況と密着した学習とは,美術を形式や様式として学ぶのではなく,美術作品の価値を学ぶものと言い換えることができる。 明治に始まる図画教育は,今では図画工作,美術と教科名を変えて続いているが,時として,これをひとまとめに美術教育として論ずることが多い。しかし,明治,大正,昭和,そして平成の今日と,行われてきた図画教育は,はたして美術教育と一つに括れるものだろうか。少なくとも美術教育と言うからには美術の理解を通して美術の価値を教え,その上で新な美術を創造する能力を養い育てるものでなくてはならない。しかし通観するに,美術の確かな価値を伝えるという教育はどの時代にも見つからない。子ども等の造形の活動はあるが美術の創造には結び付かず,造形活動そのものの価値が教育の観点から奨励されるにとどまっている。 結局,今日までの小・中学校,図画工作・美術教育は,美術,あるいは美術状況と無縁に行われてきたといえるのではないか。ひたすらに造形活動をくり返すことによって創造力や美的能力が高まるという幻想を捨て,美術理解を基礎にした指導により確かな鑑賞と創造に導く教育の実現を図ろうとするのが今回の提案であると考える。
- 美術科教育学会の論文
- 2001-03-30
著者
関連論文
- フェノロサの美術教育 : NOTANの意味したもの
- 変動社会における生涯学習及び教師教育の研究 : 日中両国の教育改革期の課題
- 視覚の再考
- 美術理解を生む教育の実現 : 鑑賞と批評 (リサーチ・フォーラム2000 : 第2回美術科教育学会課題研究会)
- 昭和初期の図画教育思想 : 郷土化の図画教育にみる社会性
- 毛筆画教育移行への要因 : 開発教授と毛筆画教育
- 視覚情報時代の美術教育
- 学会誌に見る美術教育学研究の動向と課題(研究動向と展望)
- 学校外での鑑賞指導
- 創造的造形能力の開発に関する研究 : ベストメソッドの追試による考察
- フレネ教育学における美術教育の理念と方法
- 造形教育の基礎としての「濃淡(明暗の対比)」の研究
- 明治の図画教育 (II) : 毛筆画教育への移行の要因
- 明治の図画教育 : 西洋視覚世界の教育