組織培養苗条原基によるカミツレの急速大量増殖
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概要
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セスキテルペノイドの安定大量生産を目的に,苗条原基法を使ってカミツレの遺伝的に安定したクローンの急速大量増殖を試みた.滅菌下で,3-4枚の本葉を持った5mmほどの茎頂から,1-2個の葉原基を持った茎頂ドームを取っ出した.2.0mg/lBAP添加MS液体培地(30mm×200mm試験管,25ml液体培地,pH5.7-5.8),22℃,2,000-9,000lux,回転培養装置(直径1m,毎分2回転)で,茎頂ドームを3-4週間培養して,苗条原基を得た.そして同じ組成の新鮮な培地に2-3週間毎に植え継いで,同条件で,継代培養を続けたところ,安定して生長を続け,15-20個のドームをもつ,直径200-500μmの標準的苗条原基集塊となった.一方,植物ホルモン無添加でショ糖濃度1%の4倍希釈MS(1/4MS)セラミック・ウール支持培地に,真後1.5mmほどの苗桑原基集塊を移植すると,平均4シュートが現れ,発根して,容易に小植物体に再分化した.この苗桑原基は,培地を換えずに培養を続けると,14日間の培養で30倍の重さに増殖し,平均生重量3.1gとなった.このとき苗条原基集塊の一部は茶色を呈したが,さらに35-40日後には殆どの部分が茶色となった.14日毎に培地を交換して継代培養を続けると,1ケ月で生産量にして900倍までに急速大量増殖した.14日目で,1mg生重量あだつ平均7.4個の苗桑原基密度が,1苗桑原基あたり0.54シュート形成に関与しているところから,単純計算して,1苗条原基集塊あたり900×0.54=486本の小植物体を形成することになる.得られた植物体は,外部形態的に親植物と変らなかった.親植物,4ケ月間継代培養を続けた苗条原基,再分化植物体で観察した体細胞のほとんどすべてで,染色体数2n=18を得た.従って,カミツレの急速大量増殖には,苗桑原基法と再分化法の両用が効率的であることが分った.
- 日本育種学会の論文
- 1991-09-01
著者
-
近藤 勝彦
広島大学理学部附属植物遺伝子保管実験施設
-
谷口 研至
広島大学理学部附属植物遺伝子保管実験施設
-
高野 博幸
小野田セメント(株)新規分野研究所
-
平野 盛雄
小野田セメント(株)
-
高野 博幸
小野田セメント
-
谷口 研至
広島大 理
-
田中 隆荘
広島大理
-
近藤 勝彦
広島大学理学部
-
谷口 研至
広島大学理学部植物遺伝子保管実験施設
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