循環選抜によるアルファルファ菌核病抵抗性の向上
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
アルファルファ菌核病(Sclerotinia trifoliorum Eriks.) は,晩秋から早春にかけて発病し,茎腐れ症状を呈し,株立ちを減少させる重要病害である。この病害はクローバ,レンゲなど他のマメ科車種にも罹病する多犯性病害であることから抵抗性品種の育成は難しいとされてきたが,循環選抜により抵抗性育種が可能であることを明らかにした。ほ場条件で人工接種による抵抗性検定法を開発し,愛知育成のナツワカバ,タチワカバ及びフランス,アメリカから導入した1O品種・系統による約3,000個体を基礎集団として,1983年から集団選抜と母系選抜を9世代繰り返した。各世代の選抜強度は2.0〜7.0%,集団の大きさは55〜100個体としてランダム交雑し(Table 1),選抜1世代から9世代に当たるSR 58-1〜SR 58-9の選抜系統について抵抗性検定を2回の試験に分けて実施した。ほ場検定における1〜5世代系統の生存率についてみるとSR 58-1,SR 58-2では12.4%,17.6%と低く,基礎集団の一部としたナツワカバと差がなかった。3世代系統から高くなり,5世代系統のSR 58-5は57.6%の最も高い生存率を示した(Table 3,Fig.1)。5-9世代系統の検定ではSR 58-5の42.4%に比べSR 58-9は62.9%の明らかに高い生存率を示した(Table 4)。ファルコナーの方法による累積選抜圧と選抜反応との関係から実現ヘリタビリティを求めると初期世代はh^2=0.078と低かったが,3〜9世代ではh^2=O.364と高い値を示した(Fig.4)。このことから,基礎集団では菌核病の抵抗性に関与する遺伝子の働きは小さく,その頻度も低いため,1,2世代の選抜ではほとんど抵抗性の向上が認められなかった。しかし,選抜を繰り返すことによって集団内の抵抗性遺伝子の頻度が高くなり,9世代系統のSR 58-9では大きな選抜反応が得られたと考えられた。
- 日本育種学会の論文
- 1997-12-01
著者
-
水上 優子
愛知県農業総合試験場
-
神戸 三智雄
愛知県農業総合試験場
-
稲波 進
愛知県農業総合試験場
-
神戸 三智雄
愛知県農業総合試
-
藤本 文弘
岐阜大学農学部生物資源生産学科
-
深谷 勝正
愛知農総試
-
深谷 勝正
愛知県農業総合試験場
-
藤本 文弘
岐阜大学
-
水上 優子
愛知県農業総合試験場・山間農業研究所
関連論文
- イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)とトールフェスク4倍体亜種(Festuca arundinacea var. glaucescens Boiss.)のF_1雑種における農業特性と細胞遺伝学的特性
- トウモロコシLc regulatory遺伝子導入によるキクの花色変異
- イネ育種選抜DNAマーカーへのLoop-mediated isothermal amplification (LAMP)法の適用
- Reverse Transcription Loop-Mediated Isothermal Amplification (RT-LAMP)法によるシソビジウムモザイクウイルス(CyMV)の検出
- アルファルファにおける白絹病抵抗性品種の育成 : II.選抜育成系統の白絹病抵抗性の立証
- アルファルファにおける白絹病抵抗性品種の育成 : I.発病程度の品種間差異
- アルファルファの品種群別における草丈伸長と日長,温度の関係
- アルファルファの生育特性による品種群別
- 水稲品種「あさひの夢」にみられるセジロウンカ殺卵反応の弱さとその遺伝的背景
- ブタの子宮内膜細胞における繁殖関連遺伝子の発現動態
- 胚のガラス化保存における凍結保護物質・エチレングリコールの適性濃度
- PCR法を用いたブタ胚の性判定
- Open pulled strawおよびStandard strawを用いてガラス化保存したマウス胚の生存率比較
- Lotus 属における花粉による遺伝子拡散推定の試み
- イネ(Oryza sativa L.)の脱粒性と脱粒性遺伝子sh-2による離層組織との関係
- (17)イネのツマグロヨコバイ抵抗性遺伝子Grh3の単離とその作用機構(関西部会講演要旨,平成19年度地域部会講演要旨)
- (287) イネのツマグロヨコバイ抵抗性遺伝子Grh3の単離とその作用機構(平成19年度日本植物病理学会大会講演要旨)
- カーネーション萎凋細菌病に対する抵抗性の簡易検定法
- カーネーション萎ちょう細菌病に対する抵抗性の簡易検定法
- アルファルファ菌核病抵抗性検定のための育苗条件設定と抵抗性の病理解剖学的解析
- ソバ属2種の脱粒性関連形質の種・品種間差異
- 6-12 カラードギニアグラス種子の貯蔵条件と発芽率
- トマトのTMV抵抗性遺伝子(Tm-2a)と連鎖するRAPDマーカーのSTS化
- カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの改変による高発現プロモーターの開発
- Loop-mediated isothermal amplification(LAMP)法を利用したイネ縞葉枯病抵抗性個体の簡易選抜法
- カルコンリダクターゼ遺伝子導入によるシクラメンの黄色発現
- 耐倒伏性・複合抵抗性アルファルファ品種「ネオタチワカバ」の育成
- 3-12 アルファルファ菌核病抵抗性品種の育成 : 第8報 育成系統の抵抗性評価と他病害(白絹病)に対する抵抗性発現
- 3-11 踏圧処理によるアルファルファの踏圧耐性検定
- 3-10 アルファルファのアルミニウム耐性系統の育成 : 発芽一幼苗検定法の確立
- 転換水田向飼料作物「栽培ヒエ」国内在来系統の特性
- 家畜ふん尿の多量施用による夏作飼料作物(ソルガム、スーダングラス、ギニアグラス)の生育と硝酸態窒素濃度
- 循環選抜によるアルファルファ菌核病抵抗性の向上
- 夏作飼料作物(ミレット・ス-ダングラス)における硝酸態窒素の動向
- ウマゴヤシ類(Medicago spp.)国内遺伝資源の探索収集
- オ-チャ-ドグラスの新品種「アキミドリ2」の育成とその特性
- 不定胚形成能力の異なるアルファルファ(Medicago sativa L.)遺伝子型の交配後代における不定胚生産性
- 雄性不稔アルファルファの再分化植物における花粉量と結実率の変異
- アールス系温室メロンのつる割病抵抗性遺伝子(Fom1)と連鎖するPCRマーカーの開発
- 暖地型牧草の温度反応からみた発芽と生育特性
- ブルガリアおよびギリシャにおける牧草遺伝資源の共同探索
- アルファルファ新品種「ツユワカバ」の育成
- ネリカ品種群の病害虫抵抗性の評価
- アルファルファにおける菌核病抵抗性の人工接種による圃場検定法の開発と既存品種の抵抗性評価
- アルファルファ耐湿性品種の育成--選抜による多雨環境への適応
- アルファルファにおける白絹病抵抗性品種の育成 : III.選抜世代の推移に伴う抵抗性の変動とその遺伝率
- アルファルファの乾草適性--イネ科牧草との比較
- 暖地型牧草の乾草適性--草種と生育ステ-ジ
- カラ-ドギニアグラスにおける低温発芽性の選抜効果
- アルファルファの採種に関する研究-1-開花に及ぼす日長の影響
- 愛知県農業総合試験場山間農業研究所育成系統のいもち病抵抗性と食味
- 現地見学会報告
- アフリカ稲由来NERICA15の穂いもち圃場抵抗性評価
- 山間農業研究所で育成した水稲の歴代中部系統におけるいもち病抵抗性と食味関連形質
- アフリカ水稲NERICA品種群の穂いもち圃場抵抗性の評価
- 東北・関東・東海・北陸の各地で栽培したspw1-cls的変異を持つ閉花受粉性イネ系統の開花率
- 複数の栽培環境におけるイネいもち病圃場抵抗性遺伝子pi21の収量性に対する影響
- 山間農業研究所で育成した水稲の歴代中部系統におけるいもち病抵抗性と食味関連形質