イネの適応性に関する研究 : I.温帯における籾収量に関する適応性の品種間差異

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世界の多数のイネ品種を温帯・熱帯の多くの場所に栽培し、適応性の解析を国際生物事業計画(IBP)の一貫として実施している。ここでは、1968年にSuwon(韓国)、Katmandu(ネパール)、新潟、埼玉、静岡、岡山および佐賀(日本)の7場所の無肥料区・肥料区(N 5kg/10 a)の合計14環境条件に栽培し共通にデータの得られた29品種(表2)についての収量結果を基に主としてFINLAY and WILKINSONの方法に従って適応性を調べた。表3の分散分析表では、直線回帰に有意差があって適応性の一つの尺度である安定性に品種間差異があることを示している。図3に、各環境条件の全品種平均収量(環境指数)に対し、代表的な3品種、農林29号、台中65号およびRomeoの収量反応を示した。この順に安定性が高い。図4には、各品種の平均収量と環境指数に対する回帰係数を両軸にプロットし、適応性の評価を試みた。一般に環境反応性の大きい品種ほど平均収量が高い傾向がある。日本・韓国の育成品種には平均収量が高く環境反応性の大きいものが多い。台湾品種は一般に平均収量が高く平均安定性を示す。アメリカ・イタリー品種は低収で安定している。これらのことは、同一地域で育成された品種群が適応性についてほぼ類似した反応規格を示す遺伝子構成をもっていることを示し、適応性の向上には他地域からの遺伝子の導入と利用の必要性があることを指摘した。なお、この研究で与えた環境条件は必ずしもそれぞれの品種の能力を十分に発揮させているわけでなく、その意味でここで得られた結論は適用に限界があることを指摘した。
日本育種学会の論文
1972-04-30

イネの適応性に関する研究 : I.温帯における籾収量に関する適応性の品種間差異

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