トウモロコシの発芽種子におけるシクロヘキシミドおよび6-メチルプリン耐性からみた雑種強勢
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概要
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草丈,雌穂重などの農業形質につき雑種強勢を強く発現するF_1雑種(Oh545×W22,以下,hF_1)とそうでないF_1(Oh545×Oh45,以下,nhF_1)との間に種子発芽速度の差が認められた.hF_1種子は吸水後,両親およびnhF_1よりも根鞘,幼根共に遠く抽出するが,一方,nhF_1の発芽はその両親と大差なかった(Table1).両F_1雑種の間にみられるこの違いは,ツクロヘキシミド(タソバク質合成阻害剤,以下,CHX)または6-メチルプリン(RNA合成阻害剤,以下,6MP)を濃度をかえて種子に処理することで更に顕著となった.即ち,どの系統も両阻害剤の処理濃度が高くなるにつれて種子発芽率が低下するが,その中でhF_1は両親,nhF_1よりも抑制程度が小さく,一方,nhF_1は両親よりも強く抑制される傾向にあった(Fig.1および2). 核酸およびタンバク質代謝におよぼす両阻害剤の影響を調査し,hF_1とnhF_1の耐性の違いを考察する目的から,3H-チミジン,3H-ウリジン,3H-ロイシンが,それぞれ胚中のDNA,RNA,タソバク質へ取り込まれる量を測定した.3H-ウリジンと3H-チミジンの取り込みはhF_1とその両親について調査した.3H-ウリジンの取り込みはいずれの材料でも6MP処理(3×10-4M)により無処理区の70〜80%程度にまで阻害されたが,実質取り込み量は無処理区での値を反映する彩でhF_1が最大であった(Table3).一方,CHXを5×10-5Mで処理するとどの種子も完全に発芽を停止するが,3H-ウリジンの取り込みは阻害を受けず,hF_1が両親よりも多く取り込む現象もなかった(Table3).3H-チミジンの取り込み量は無処理区においてW22が最大で,hF_1,Oh545の順に少なかった.ところが,6MP(3×10-4M)処理により両親の取り込みはhF_1のそれより高率で阻害を受け,実質取り込み量ではW22とhF_1との間で差がなくなった(Table4).6MPはまた,3H-ロイシンの取り込みも阻害したが,その程度はCHXの場合よりも小さく,実質取り込み量では無処理区と同様,hF_1が両親を凌駕した(Table4).CHXは処理濃度(0.4,1.0,2.0×10-5M)の高まりにつれ,両F_1雑種およびそれらの両親系統のいずれについても,3H-ロイシンの取り込みを順次より強く阻害した.また,その阻害率は系統間でほぼ大差なかった.しかし,CHXに対し最も感受性の高いnhF_1の実質取り込み量はOh545,W22のそれと大差なかったが,hF_1の取り込み量はいずれの濃度区においても他より多かった(Tab1e4).
- 日本育種学会の論文
- 1986-09-01
著者
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