ダイコンとキャベツとの属間キメラの栄養繁殖後代で認められた新しいタイプの出現とその特徴
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概要
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異種細胞・組織間の形態的,生理的,遺伝的相互作用を調べるため,in vitro寄せ接法によりダイコン"美禄菜"と赤キャベツ"ルビーボール"との属間キメラを合成し,これらキメラ植物の外部形態,生理的特性を詳しく調べた.その結果,種々の形態的,生理的相互作用が認められた.V_1世代(最初のキメラ世代V_0から腋芽を培養して得られた栄養繁殖世代)で,形態的にはダイコンの復帰型と同定された植物のなかで,その植物の葉の表層にワックスを強く発現する,新しいタイプのキメラの出現が認められた.このタイプの植物は抽苔した花茎の分枝数や花の数が増加し,開花日は対照植物や通常のダイコンの復帰型より遅かった.またダイコンをこのタイプのキメラ植物に戻し交配した場合の着莢率は高かった.さらにこの新タイプの葉の横断切片の観察から,柵状組織には通常のダイコンの細胞層より厚い部分が認められ,キャベツの細胞を含む層構造をとっていることがわかった.これを確認するために,アイソザイム分析を行ったところ,やはり両親のバンドを有しており,さらにこのタイプのみに特有の新規バンドが現れたので,この層はキャベツの細胞・組織を部分的に有するだけでなく,何らかの相互作用をしている可能性が考えられた.また花粉稔性を調査した結果,MRR(ダイコン型をM,キャベツ型をRとし成長分裂組織の起源層構成として表層から内層へ,LI層-LII層-LIII層として表す)タイプが最も低く,戻し交配によって種子は得られなかった.一方,MMRのように生殖細胞形成層であるLII層がダイコンの場合には花粉稔性も高く,ダイコンを花粉親として戻し交配すると正常な"美緑菜"型種子が得られた.この属間キメラの栄養世代(V_0,V_1,V_2)3世代に戻し交配して得られた種子後代の諸形質を調査したが,現在まで明瞭な遺伝的変異は認められていない.
- 2002-06-01
著者
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平田 豊
農工大・農院
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平田 豊
東京農工大学一般教育部 生物学
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野口 貴
東京都農業試験場江戸川分場
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平田 豊
東京農工大・国際環境農学
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肖 秋濱
東京農工大学大学院連合農学研究科
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陳 利萍
東京農工大学大学院農学研究科
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保木 祐樹
東京農工大学大学院農学研究科
-
保木 祐樹
農工大・農院
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