イネ葯培養における異なる培養時期への^<60>Coガンマー線照射の影響
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概要
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遺伝変異の拡大と固定を目的に,イネの葯培養系への放射線照射を試みた.しかし,単に培養系への照射といっても,培養細胞は脱分化から再分化へと様々な段階を経ており,その各段階で放射線照射効果が異なることが予想された.そこで,イネ品種日本晴の葯培養(二段階法)の培養直前期,脱分化期,および再分化期に^<60>Coガンマー線照射を行い,そのカルス形成および再分化に与える影響の比較を行った。その結果,カルス形成に関して,脱分化期照射により培養直前期照射でその阻害効果が大きく,脱分化期照射においてもその初期(葯置床2日目)と後期(葯置床7日目)で比較すると,初期照射でより大きな阻害効果が認められた(Table 1).このようなカルス形成阻害効果の差は,照射された時期に小胞子がもつ細胞数によっているものと思われた。照射された小胞子内の細胞のうち,それほど障害を受けなかった細胞が分裂を続けカルス化するため,小胞子が照射時に帯つ細胞が多ければ多いほど,その補償効果によりカルス形成率が高くなるものと思われた。カルス誘導過程の組織学的観察(Fig.1)により,培養直前期,葯置床2日目および7日目の小胞子は,それぞれ1個,2個および多数の細胞を含んでいた。また再分化に関しても同様な補償効果が認められ(Table 2),培養直前期照射および再分化期照射で再分化阻害効果が認められた。脱分化期照射は,再分化に関してはほとんど影響を与えないようであった。本実験において,カルス形成率及び緑色植物体再分化率に加えて,置床葯数あたりの緑色再分化体が誘導された葯の数を,置床葯効率(Plating anther efficiency(PAE))とし,放射線感受性の比較のための指標とした。置床葯効率を指標とした場合,培養直前期で放射線感受性がいちばん高く,次いで再分化期であり,脱分化期では感受性がいちばん低かった。それぞれの置床葯効率に関する放射線半減線量は,約6Gy,20〜25Gyおよび50Gy以上であった。
- 日本育種学会の論文
- 1997-06-01
著者
-
服部 一三
名大院 生命農学研究科
-
服部 一三
名大農
-
服部 一三
名古屋大学大学院・生命農学研究科
-
服部 一三
名古屋大学
-
中村 和弘
名古屋大学農学部
-
Hattori Kazumi
名古屋大学農学部
-
Narciso J
Nagoya Univ. Nagoya Jpn
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