コムギ赤粒種からの種皮色素の抽出法の開発と色素含量の品種間差異
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
コムギの白粒種は赤粒種に比べて,製粉時に種皮が小麦粉に混入しても粉色の劣化が少ないため,色の良好な小麦粉を得るために有利である。しかし,白粒種は赤粒種に比べて穂発芽しやすいため,収穫時に降雨にあう可能性が高い地域では栽培が困難であり,穂発芽耐性の強化が重要課題となっている。穂発芽耐性を有する白粒種を育成するためには種皮色と穂発芽性との関係について詳しい知見が必要である。そのためには種皮色素の物理化学的性質についての情報を得なければならないが,分析に供するためには色素の抽出可溶化が必須である。そこで本研究では赤粒遺伝子(R1,R2,R3)の遺伝子分析を行なった後,種皮色遺伝子型が明らかになった品種を材料として,ふすまからの種皮色素抽出法を検討し,R遺伝子と色素の吸光値との関係を調べた。遺伝子型既知の検定親(白粒種,Chinese Spring(R1,r2,r3),Norin10/Brevor14(r1,R2,r3),Red Bobs(r1,R2,r3),およびRL 4137(R1,R2,R3))との交配により,フクワセコムギ,農林66号の遺伝子型をr1,R2,r3,農林10号,アサカゼコムギの遺伝子型をR1,R2,r3と同定した。また,キタカミコムギ,フクホコムギおよび農林61号の遺伝子型をそれぞれR1,r2,R3,r1,R2,R3,R1,R2,R3と同定した。赤粒遺伝子の数が異なる種皮色遺伝子型既知の白粒3品種および赤粒9品種の計12品種を用いて種皮色素の抽出法を検討した。製粉して得られたふすまよりヘキサン,アセトン,ジエチルエーテルでカロチノイド系色素を除去してから1M水酸化ナトリウム中で100℃,30分間加熱し,塩酸で酸性に調整してからブタノールで色素を抽出した。ふすま中には胚乳部が混入しているため,デンプン量を測定することによりふすま中の胚乳を定量し,ふすまの重量より胚乳量を差し引いた値をふすま中の種皮量として,単位種皮量あたりの吸光値を求めた。380nmから550nmの範囲での吸光値を測定した結果,吸光値は赤粒遺伝子の数が増すにつれて大きくなる傾向を示した。この結果より,本方法によってコムギの赤粒遺伝子によって生成される種皮色素が抽出され得ると考えられた。
- 日本育種学会の論文
- 1994-09-01
著者
-
小前 幸三
農研機構 作物研究所
-
小前 幸三
農研機構・作物研究所
-
金子 成延
農業研究センター
-
小前 幸三
農業研究センター
-
長嶺 敬
農業研究センター
-
山田 利昭
農業研究センター
-
金子 成延
作物研究所
関連論文
- 高β-グルカン含有大麦「ビューファイバー」の育成と特性 (大麦・大豆増産による農村振興)
- 高β-グルカン含有大麦「ビューファイバー」の育成と特性(2) (大麦・大豆増産による農村振興(2))
- 関東地方の畑地に適するパン用小麦品種・系統の選定
- "売れる麦" : 品種開発のめざすもの
- コムギ赤粒種からの種皮色素の抽出法の開発と色素含量の品種間差異
- 新規もち性小麦系統 「谷系 A6599-4」 のWx-D1遺伝子上の点突然変異が関わるデンプンの構造特性
- 秋まきコムギ品種「きたほなみ」の高製粉性および良色相の要因解析
- チュニジアヘ導入されたマカロニ小麦遺伝資源の特性評価
- 短強稈・極良食味水稲品種「キヌヒカリ」の普及と母本的有用性
- 高β-グルカン含有大麦品種「ビューファイバー」の品質特性と食品への利用(3) (大麦・大豆増産による農村振興(7))
- 日本小麦品種における澱粉付着タンパク質と硬軟質性の関係
- Hordeum bulbosumとの交雑による日本コムギ品種の半数体作出率に関するダイアレル分析
- コムギ種子根の重力屈性反応に関する遺伝
- チュニジアヘ導入されたコムギ遺伝資源の黄さび病抵抗性の変異
- 適温および不適温下での春播コムギの出芽性のスクリーニング
- 機能性多糖を多く含有する裸性オオムギ新品種「ビューファイバー」の育成
- 1991年植物新品種保護国際条約(UPOV条約)及び腫苗法の改正と新しい植物品種保護制度の仕組み
- イネ品種IR28を抵抗性親とする雑種集団における白菜枯病抵抗性の有効な選抜手段
- イネ品種IR26の白菜枯病量的抵抗性に関する遺伝母数の推定値と選抜における意義
- 良色相小麦品種の色相支配要因の解析
- 高β-グルカン大麦系統「関東裸91号」の水溶性β-グルカンの特性解析
- 小麦の「種皮切れ込み」性と種皮のアラビノキシランの関係について