熱帯に局在した加熱による波動励起と中層大気への伝播
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概要
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熱帯に局在した非定常な加熱に対する球面上の静止大気の応答を, 線形化したプリミティブ方程式系を用いて理論的に調べた. 変数分離法で問題を解く一方で, 線形性を評価するために非線形方程式の時間積分も行なった. 現実的な強さの加熱に対する応答の線形性は良い. 卓越する応答は, 赤道域に捕捉され鉛直スケールが加熱のそれにあった鉛直伝播性の波動と, 全球的なノーマル(自由)モードである. 赤道域に捕捉された波動は, 中層大気中では角振動数が10×[散逸の時間スケール]^<-1>のオーダーのものが効果的に応答をする. 振動数がこれより大きい場合確率論的に見れば応答が抑制される. また振動数がこれより小さい場合も散逸のために応答が抑制される. 理想化した確率論的な加熱過程の一試行として, 時空間にガウス型をした加熱に対する応答の空間パターンを調べた. 加熱の時間スケールが数日以上の場合には, 応答の水平断面は初期に「ギルパターン」を示し, やがて低緯度域で東西に広がる. 一方, 短い時間スケールの加熱の場合には, 重力波が同心円的に広がり, やがてやはり低緯度域で東西に応答が広がる. 確率論的な加熱過程により励起される, いくつかの種類の波動のエネルギーと運動量のスペクトルを計算した. 加熱の時間スケールが短くなると重力波がロスビー波に比べて相対的に増加する. 一方, 加熱の東西スケールが小さくなるとロスビー波が重力波に比べて少し増加する. 加熱のスペクトル形をうまく与えれば, 現実的な熱帯の潜熱放出総量に相当する範囲内で観測される鉛直伝播性波動のエネルギーや運動量をオーダー的に再現し得る. ノーマルモードのエネルギーについても同様である. 卓越する振動数が散逸率より大きい非定常な応答を求めるときには, 対流圏に着目する場合でも波のエネルギーが中層大気に抜けていくということを考慮に入れる必要があることがわかった.
- 1996-04-25
著者
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