ストレスタンパク質ヘムオキシゲナーゼの新たな役割 : 病態との関連性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ヘムを一酸化炭素(CO)とビリペルジンに分解するヘムオキシゲナーゼ(Heme Oxygenase;HO)には, 3つの分子種が知られている。そのうち, HO-1は様々なストレスに応答して誘導され, 近年その応答が他のストレス応答タンパクよりも広範にわたることから, ストレスマーカープタンパクとしても考えられている。ところで, 好気性生物は酸素を利用しエネルギーを得ていると同時に常に産生される活性酸素による酸化的ストレスにさらされている。この酸化的ストレスから身を守るために生体は, 様々な防御システムを持っている。しかし, この様なストレス防御機構のアンバランスや破綻が様々な病態発現の一因となっていることが明らかとなっている。近年, この様な酸化的ストレスが原因と考えられる様々な病態においてHO-1誘導の報告が相次いでおり, 本酵素は単にヘム分解の律速酵素という以外の幅広い生理的な役割が提示されつつある。本総説では, 急速な仕事の展開を見せている生理的, 病理的状態におけるHOsの役割やヘム分解産物であるCOやビリルビンの役割を中心に述べる。現在までのところ, HO-1誘導が明らかになっている主な病態には, アルツハイマー病やパーキンソン病などの脳神経系病態, 高血圧症やアテローム性動脈硬化症さらには虚血-再灌流など広範囲で多臓器にわたる。また, ヘム分解産物COはサイクリックGMP産生を促進することから, 一酸化窒素と同様にガス状伝達物質としての作用が明らかにされてきており, このCO産生酵素としてのHO-2分子種の働きも注目されている。さらに, COは血圧調整にも関与していると考えられている。もう一つのヘムの最終分解産物であるピリルピンは抗酸化作用があることから, 酸化的ストレス状態でのHO誘導の生理的意義として位置づけられている。さらに, 近年HOs遺伝子発現を抑えた欠損動物を用いた結果から, HO-1は鉄代謝のホメオスタシス維持に重要であること, さらに生命維持自体にも重要であることが明らかにされている。
- 日本トキシコロジー学会の論文
- 1998-05-09
著者
-
吉田 武美
昭和大学薬学部毒物学講座
-
吉田 武美
昭和大学薬学部毒物学教室
-
吉田 武美
昭和大学 薬学部 毒物学教室
-
小黒 多希子
昭和大学薬学部毒物学教室
-
小黒 多希子
昭和大・薬・毒物
-
吉田 武美
昭和大学薬学部
関連論文
- 2-Hydroxyethyl methacrylateのモルモット口腔粘膜浸透性の免疫組織学的解析
- レジン系歯科材料に含有されるBisphenol-Aの定量
- Compomerから溶出されるBisphenol-Aの定量
- 歯科用高分子材料中のBisphenol-Aの定性と定量 : フィッシャーシーラントおよびコンポジットレジンについて
- Fissure sealant から溶出されるbisphenol-A の定性と定量
- 歯科材料からのbisphenol-A溶出の可能性 第1報 市販dentin bonding agentとfissure sealantを用いた溶出試験
- P-478 腎疾患におけるステロイド療法への薬剤師の関わり(5.薬剤服用歴管理・服薬指導(入院患者服薬指導),"薬剤師がつくる薬物治療"-薬・薬・学の連携-)
- P-284 大学院病棟実習の学生、教員、薬剤師によるシステム評価(19.薬学教育・生涯教育(認定),"薬剤師がつくる薬物治療"-薬・薬・学の連携-)
- 臨床睡眠薬理の豆知識(第2回)GABA[A]受容体の構造と機能
- P-495 医療薬学系大学院の病棟実習における教員と薬剤師の連携教育効果に関するアンケート調査
- P-103 パーキンソニズムの客観的薬効評価表の作成と薬物治療への参画
- W-2-6 大学院病棟実務実習における一般・到達目標の設定と評価への応用
- P-384 薬学部教員による大学病院病棟実習施設への定期的訪問とその成果
- 薬物依存のメカニズム
- フェノバルビタール依存性形成機構におけるGABA_A作動性神経とグルタミン酸作動性神経の相互作用
- 転写因子AP-1を介するブファリンによるアポトーシス誘導
- 各種市販デンティンボンディング材がモルモット口腔粘膜に及ぼす副作用
- A-14 デンティンボンディング材がモルモット口腔粘膜に及ぼす影響
- ヒトおよび動物皮膚に対するデンティンプライマーとしての2種ダイオール水溶液の安全性の評価
- P-39 ベースレジンの成分によるモルモット皮膚に対する刺激性の検討
- モルモットを用いた各種デンティンプライマーによる接触性皮膚炎の検討
- デンティンプライマーとしてのダイオール水溶液の皮膚安全性の検討
- 口腔粘膜刺激試験と粘膜代替法の相関関係
- P-13 市販デンティンプライマーおよびボンディング材によるモルモット皮膚に対する副作用について
- 有害事象発生時の対応と食物テロへの対策(誌上シンポジウム)
- 学会賞を受賞して(日本トキシコロジー学会からのお知らせ)
- 講演:〔日本香粧品学会〕第31回学術大会(2006)会頭講演 有効性とセットで考える機能性化粧品素材の安全性
- ストレスタンパク質ヘムオキシゲナーゼの新たな役割 : 病態との関連性
- ホルムアルデヒドの気管組織に対する作用の毒性学的研究
- P-496 リハビリテーション専門病棟における医療系大学院実習の成果
- CYPダウンレギュレーションとサイトカインの役割解明
- ブファリンによるMAPキナーゼカスケードの活性化とアポトーシス誘導
- ヒト白血病細胞におけるブファリンにより誘導されるアポトーシス関連遺伝子の解析
- 毒性学におけるオルニチン脱炭酸酵素の意義について
- 鑑識化学分析
- 覚せい剤の生化学的毒性学
- 22B-13 Buprenorphine の酵素免疫測定法の確立とその応用
- グルタチオン減少によるラット肝ヘムオキシゲナーゼ遺伝子発現
- 催奇形性物質YM9429による細胞の分化阻害作用
- Differential Induction of Hepatic and Renal Microsomal Cytochrome P450 by N-Phenylalkylimidazoles in Rats
- ガスクロマトグラフ-質量分析計による覚せい剤の分析と覚せい剤使用被疑者の顔面および頸部を拭ったガーゼからの検出
- 肝疾患モデルラットにおけるニコチン代謝
- 酸化的ストレスによるヘムオキシゲナーゼ誘導におけるc-FOSの役割
- 7-デヒドロコレステロール還元酵素阻害剤による CYP2B 1/2 の誘導
- Regio-Related Differential Induction of Hepatic Microsomal Heme Oxygenase and Cytochrome P450 by Substituted Imidazole and Pyridine Compounds in Rats
- Simultaneous Determination of Urinary Methamphetamine, Cocaine and Morphine Using a Latex Agglutination Inhibition Reaction Test with Colored Latex Particles
- 中毒起因物質の分析法
- 薬毒物による酸化的ストレスとヘムオキシゲナーゼ誘導
- トキシコキネティクスの有用性と問題点
- 有機リン剤の毒性再考 : 長野県松本市毒ガス事件に関連して
- 熱イオン化検出器付ガスクロマトグラフィーによるラット尿中メタンフェタミンとその代謝産物の一斉高感度分析
- 熱イオン化検出器付ガスクロマトグラフィーによる覚せい剤の分析とその応用例について
- 教育賞受賞 仮家公夫氏の業績
- 薬毒物中毒あれこれ
- 編集委員長をお引き受けして
- 最近の化学物質による急性中毒の話題(化学物質による急性中毒 : 最近の話題, 救急救命と中毒物質の分離・同定)
- 香粧品は経皮吸収をどう考えるべきか--安全性を含めた一私見
- インターフェロンーα/βによるメタロチオネイン誘導
- 化学物質中毒事故対策と毒物学
- 平成8年度食品化学講習会 免疫毒性とアレルギ-
- 長野県松本市毒ガス事件を考える
- 第10回国際薬理学会
- "Regulation of Heme Protein Synthesis", Edited by:Hiroyoshi Fujita, AlphaMed Press, Ohio, USA., 1994
- 薬物代謝酵素の発現誘導におけるマイクロRNAの関与
- 薬物代謝酵素の発現誘導におけるマイクロRNAの関与
- p-azophenobarbital homologous albuminに対するウサギの免疫応答〔英文〕
- Analytical Methods for Drugs and Chemicals That Cause Poisoning
- 最近の化学物質による急性中毒の話題(化学物質による急性中毒 : 最近の話題, 救急救命と中毒物質の分離・同定)